法律情報

『労使関係の調和構築に関する意見』について

 Q.当社は、青島市の日系企業です。噂によれば青島市で最近労使関係の調和構築に関する新たな政策が公布されたそうですが、ご紹介いただけないでしょうか。

 A.わかりました。ご理解の通り、青島市人民政府は、昨年12月26日に『労使関係の調和構築に関する意見』(青発[2016]38号)(以下「意見」という)を公布しました。これに先立つ2015年3月には国務院が、2016年1月には山東省政府がそれぞれ『労使関係の調和構築に関する実施意見』を公布し、労使関係の調和構築に関する規定を作成しています。今回の「意見」は、国と省の規定をベースに、具体的な規定を設けたものとなっています。「意見」の規定について、企業の皆様には、次の3点にご留意いただきたく存じます。

 1. 労使関係を調整する法律、行政法規の新たな動向について

「意見」は、関連する所管機関が計画的に、ステップを踏んで労使関係の調整に関する地方の政府規則、規則性文書の起草、制定(改訂)業務をしっかりと行うように指摘しています。弊所の把握している情報によれば、今年1月1日、国家レベルと省レベルの3つの労使関係の調整に関する法律、行政法規が発効します。具体的には『労働の保障に関する重大な違法行為の社会への公布弁法』、『企業労働保障法令遵守信義レベル評価弁法』、『山東省企業賃金団体交渉条例』です。弊所のホームページにも、一部この新法についての解説を簡単に掲載しておりますので、是非閲覧いただければ幸いです。また、今後も関連する新たな法律、行政法規が公布・施行される可能性がありますので、企業の皆様に置かれましては、引き続き動向に注目いただければ幸いです。

 2. 労使関係に関する重大事項のリスク評価制度

「意見」は、企業が改革や制度改訂、合併や再編、移転等の労使関係の調整に関する重大な事項を行う場合(以下「重大事項」という。)、必ずしっかりとリスク評価を行い、最大限不安定要素を排除することを求めています。弊所の実務経験に基づけば、リスク評価の結果は、従業員に対する経済補償金の支給基準等、企業の重大事項の決定の際に極めて大きな影響を及ぼします。企業、特に近々移転や、事業の調整等により労使関係に重大な影響を及ぼす事項のある企業には、充分に注目していただきたいですが、重大事項に関するリスク評価制度については、まだ具体的な規定がされていないため、関連する所管機関に問い合わせと確認を行い、事前に関連する対応策をしっかり作成されることを、お勧めいたします。

3. 信用のある企業は連携して奨励し、信用を失なった企業は連携して懲戒する制度

当該「意見」に基づき、人力資源社会保障局、工商局、国税局、地方税務局、裁判所、検察院、法制弁公室等の多くに政府機関の間では、信用のある企業は連携して奨励し、信用を失った企業は連携して懲戒する制度が実行されます。企業に労働関連法に違反する行為がある場合、関連する所管機関は、社会へ公表し、企業の信用レベルを低下させ、企業に対する日常の巡回回数を増やし、企業の責任者と面談する等、懲戒措置を行い、企業の違法行為の影響する範囲を拡大し、企業が法律を犯すコストを高める措置を講じます。これとは反対に、信用のある企業は、日常の巡回回数を減らし、優秀企業として表彰する等の優待措置を受けることができます。

上記3点のほか、「意見」では団体交渉及び労働協約制度等の労使関係についての新たな要請が全面的に押し出されています。労使関係は、社会関係の重要な内容の一つですので、中国経済が転換期を迎えるなか、労使関係に関する最新の要請を正確に把握し、適時企業の労務制度を調整して、しっかりと労務に関するコンプライアンス審査を行っていただく必要があるものと存じます。

 

 

作成日:2017年02月13日