最新法律動向

『山東省企業賃金団体交渉条例』について

 2017年1月1日から施行される『山東省企業賃金団体交渉条例』の主な内容を説明申し上げます。

企業賃金団体交渉とは、従業員側と企業側が法に基づいて企業の賃金配分制度、賃金の配分形式、賃金収入レベルと賃金支給方法等を平等に協議する行為を指します。

内容のポイントは、次の通りです。

1.交渉の代表者:労使双方の代表者数は対等である必要があります。各側とも最低3名で、なお且つその中から首席交渉代表者を選びます。労使双方の交渉代表者は、相互に兼任することはできません。

従業員側の代表者は、生産現場の従業員代表の割合は3分の1を下回ってはならないとされています。従業員側の首席交渉代表者は、通常企業の労働組合主席が担当します。従業員側の他の交渉代表者は、企業の労働組合から推薦され、従業員代表大会に提起されるか全従業員で討論を行い、従業員代表全員か従業員全員の過半数の承認により選出されます。労働組合を設立していない企業では、従業員側の交渉代表者は、上級の労働組合が従業員による民主的な推薦を促し、なお且つ従業員全員の過半数の承認よって選出します。その首席交渉代表者は、従業員側の交渉代表者の中から民主的な推薦により選出されます。

2.交渉される主な内容:賃金配分制度、賃金基準、賃金配分方式、賃金支給方法。従業員の年間平均賃金レベル及びその調整幅と調整方法。当該企業の最低賃金基準。賞与、手当、補助金等の配分方法。時給、歩合単価、労働ノルマの基準。試用期間、病気休暇・私事休暇、各種有給休暇期間中の賃金福利待遇。賃金に特化した労働協約の期限及び変更、解除、終了の条件。違約責任等。

法律、行政法規に別途規定のある場合を除き前に述べた内容の全て又は一部を協議することができます。賃金に特化した労働協約の期限は一般に1年で、最長でも3年を超えないとされています。

3.交渉する上での主な根拠:地域、業界、企業の労務コストのレベル。地域、業界内の従業員の平均賃金レベル。政府機関が公布した労働市場賃金指導価格、賃金ガイドライン、最低賃金基準。当該地区の住民の消費価格指数。企業の労働生産率と経済効果。企業資産の保持と増加状況。前年度の企業従業員賃金の総額と従業員の平均賃金レベル。現地の雇用資源の需給状況。その他、賃金団体交渉に関する要素。

4.交渉段階でのポイント従業員側と企業側は、均しく賃金団体交渉に関する要求書を提出することができます。一方から賃金団体交渉要求書が提出された場合、他方は要求書を受け取った日から10日以内に回答する必要があり、正当な理由なく交渉を拒否することはできません。要求書と回答は、書面形式を採用し、交渉の日時、場所、内容等を明確にし、自分側の主張について説明を行う必要があります。

賃金に特化した労働協約締結した後、企業側は人力資源社会保障局へ関連する書類を送付して、報告する必要があります。人力資源社会保障局から異議が申し立てられなければ、当該協約は効力を生じます。効力が生じてから交渉の代表者双方は、自分側の全メンバーに労働協約の書類を公表する必要があります。従業員側の交渉代表者は、労働協約の書類等の関係資料を1級上の労働組合に届出する必要があります。

企業側は、每年少なくとも1回、従業員代表大会か従業員全員へ賃金に特化した労働協約の履行状況を報告する必要があります。

 従業員が「協議の仕方がわからない」という問題を解決するため、条例は、労使双方の首席交渉代表者は書面にて当該企業以外の弁護士、基層法律サービス従事者等の専門家に自分側の交渉の顧問を依頼することができると定めています。労使双方が協議の結果同意すれば、第三者のコンサルティング会社を招いて企業の賃金団体交渉へ参与させることもできます。

また、企業は交渉代表者のために賃金団体交渉に出世貴するために必要な労働条件を提供することも定めています。交渉代表者が出席する賃金団体交渉及び関連する会議、研修等は、正常な労働を提供したものと見なし、その賃金、福利待遇は変えてはならないと定められています。また企業は、交渉代表者が本条例の職責を履行することによって、その労働契約を解除してはならないと定めています。各企業におかれましては、この条例に着目いただきますよう、お願い申し上げます。

作成日:2016年12月21日