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12を超える省で社会保険料率引き下げ 労災・失業・出産保険に集中

 「第13次5ヵ年計画」の要綱の中で、社会保険料率を適度に引き下げることが提起されたと、新華社が報じた。上海市、広東省、北京市、天津市、甘粛省、江西省等、12を超える省や市において、社会保険料率を引き下げる旨の文書が相次いで公布されており、引き下げは労災、失業、出産の保険料率に集中している。

  最近、北京市、天津市の労災保険の基準料率は、調整前の0.5%から2%より、0.2%から1.9%に引き下げられた。天津市は保険料の会社負担分の料率について、失業保険では2%から1%に、出産保険では0.8%から0.5%に、それぞれ引き下げることを提起している。

  各界からの要望の多い養老保険と医療保険の保険料率引き下げについて、現状では上海市、浙江省杭州市、福建省アモイ市等で実施されている。上海市では今年1月1日より社会保険料率を引き下げ、従業員基本養老保険の料率について、企業負担部分を21%から20%に、従業員基本医療保険の料率の企業負担部分では11%から10%に引き下げた。杭州市では、従業員基本医療保険料の会社負担分を毎年の納付時に、1ヶ月分を減額して徴収するとした。杭州市人力社会保障局の予測では、杭州市の主要市区だけで、この引き下げによって医療保険基金の収入が10億元近く減少することになり、1%強の料率引き下げに相当することになると見込んでいる。

 料率引き下げは待遇低下につながるのか

 業界関係者は、現在の「五険」(養老保険・医療保険・出産保険・失業保険・労災保険の総称)基金の徴収と待遇について、両者は直接関連し合っているわけではないと解説する。適用される社会保険待遇の程度は、主に国と各地方ですでに制定されている待遇についての計算・支給や医療費の精算に関する管理弁法によって決まり、一部の基礎養老金待遇を除いて、その他の社会保障待遇と納付料率の程度に直接の関係はないとの認識である。

  記者が取材したところによると、失業・労災・出産保険待遇の支給基準は、主に在職している従業員の平均賃金等の要素と密接に関わっているが、医療保険の医療費の精算は、主に精算の範囲及び割合と関連しており、いずれも納付料率には関連していない。このため、現行の社会保障待遇の適用基準が変更されない限り、今後の待遇が料率調整による影響を受けることはないものと見られる。

 人力社会保障研究所の金維剛所長によると、保険加入者が法に基づき適用をうける保障の待遇を維持することを考慮し、一部の地区においては段階的に料率の適度な引き下げを行い、また企業の負担料率を適度に引き下げた場合、当期の保険基金の収入が支出を上回るか、財政補助に頼ることができ、基金の累積残高を用いて基金の収支バランスを確保できるといった条件を満たしているなら、個人の関連各保険種における待遇レベルを下げないことが可能だという。

 社会保険料率は、今後どのように引き下げられるか

一部の地方の社会保険機関によると、従業員の養老、医療保険では基金収入により支出が賄いきれない状況が毎年続いているため、これらの2項の社会保険料率を引き下げることにかなり困難があり、全国で統一的に協調しての実施することが必要であるという。

  金維剛所長によると、現在、人力社会保障部では都市・農村の従業員基本養老保険の基礎養老金を、中国全体で統一する案が検討されているところだとのことである。中国各地では経済発展の程度が異なっており、人口構成や養老保険基金の収支、累積残高の状況にも顕著な差が存在しているため、今回の全国統一化でも基金収支の一元化までは実現できそうにない。このため、プランが発表され、施行された後もなお、各地に全国統一の養老保険料率が適用されるようになるまでには、段階的な調整の過程を経ることになりそうだ。

 関信平教授によると、養老金の全国統一化の実現は、広東省等のように基金の残高が比較的潤沢な地区の基金を、残高の少ない地区、ひいては収入で支出を賄えない地区に充当する調整を意味しているという。養老金が全国的に一括管理されるようになって一定期間の過渡期が過ぎると、各地が実際の状況に応じて異なる料率を設定しながら、全国的な統一化に向かって少しずつ差異を縮小していくことになるという。

「このようしてこそ、より多くの人々から支持を得ることができ、共通認識を得ることにつながる。」

 (新華ネットより)

作成日:2016年04月19日