青島市が施行する『大気汚染防止法』についての状況と注意事項
Q.当社は、青島市の建築資材の加工業を営む日系企業です。最近のニュースにより、改訂された『大気汚染防止法』が2016年1月1日より施行されたことに伴い、青島市環境保護局は最近取締を実施し、大気汚染の排出基準を超えていたとして4社が10万元以上の行政処分を受けたという報道を耳にしました。同法の青島市での施行の状況と注意事項を教えて下さい。
A.わかりました。それでは、次の通り順を追ってご説明いたします。
1.法律が施行された背景について
中国の環境汚染の状況が悪化してきたことに伴い、中国政府も環境汚染対策を強化することになりました。新たな『環境保護法』の施行後、環境汚染対策に関連した『大気汚染防止法』の改訂も行われました。当該法は、2015年8月に改訂版が可決し、2016年1月1日から正式に施行されました。新たな『環境保護法』は固形物、液体、気体等の汚染物質の排出についてのマクロ的な規定です。これに対して『大気汚染防止法』は、『環境保護法』を細分化し、主に気体の汚染物質の排出、防止措置等を定めたものです。
2.青島市での施行の状況
『大気汚染防止法』の施行にあわせて、2015年11月30日に青島市環境保護局から公布された『青島市汚染物質排出抑制地区の策定に関する通知』(青環法[2015]113号)(以下「通知」という。)の規定により、青島市の行政区は、中心抑制区と重点抑制区の2種類の大気汚染物質排出抑制区に分けられました。中心抑制区とは、観光地区、自然保護区、国家森林公園等のエリアを指し、重点抑制区とは、中心抑制区以外のエリアを指します。エリアの違いにより、汚染物質排出の基準と要求も異なります。当該「通知」では、次の通り定められています。
(1)中心抑制区内では、大気環境を汚染するような新たな生産企業の設立は禁止するものとし、既に設立されている大気環境を汚染する生産企業は、段階的に移転しなければならない。
(2)重点抑制区内で新たに設立される企業及び現有の企業は、『山東省区域性大気汚染物質総合排出基準』の規定に基づき、大気汚染物質の排出基準を超えてはならない。
(3)重点抑制区の大気汚染物質の排出濃度限界値が、環境品質面での要求を満たさない場合、青島市政府は、環境キャパシティの総量抑制の原則に基づき、汚染源の排出濃度の限界値を逆推し、重点抑制区内の企業では逆推後の汚染源排出濃度限界値で取り締まるものとする。
3.日系企業の皆様に留意していただきたいポイント
(1)日系企業の皆様におかれましては、所在地の所属しているエリア及びそのエリアに定められている汚染物質排出基準を確認していただき、排出基準を超えてしまったため制裁金を科されたり、生産を停止して改善するよう命令されたり、業務停止命令を受けたり、工場閉鎖等の行政処分を受けるリスクを避けられる事を、お勧めいたします。
(2)『大気汚染防止法』第78条に定められた『有毒有害大気汚染物質リスト』は、まだ公布されておりません。現在、青島市の環境保護機関は、現行の『山東省地域性大気汚染物質総合排出基準』所定の汚染物質排出基準で取締を行っています。『有毒有害大気汚染物質リスト』が公布された後、汚染物質の種類にも変化が生じる可能性がありますので、日系企業の皆様におかれましては、関連立法の動向に注目いただき、早めに対応策の準備をしていただければ幸いです。
作成日:2016年01月20日