最新法律動向

従業員の家族が食堂で負傷した場合も会社へ損害賠償を要求可能

黄女史の夫は、ある会社の従業員であり、社内に設置された食堂は、従業員に無料で昼食を提供していました。黄女史の家は会社の近くにあり、黄女史と娘の昼食問題を解決するため、夫から会社へ申し立てたところ、会社は黄女史と娘が社員食堂で昼食を取ることに同意したため、毎食1人当たり6元の食費を払っていました。(実際のコストより若干高い金額。)

先頃、食堂の床を清掃した後、何の警告表示もしていなかったため、黄女史が食堂に入った際、仰向けに倒れてしまい、6万元余りの医療費用を払わされたばかりでなく、10級の後遺障害に認定されることになりました。このため黄女史は会社が合理的な安全保障義務を履行しなかったことを理由に、損害賠償を請求しました。しかし会社側は当該施設は社員食堂であり、対外的な営業を目的としていないため、外部のものに対して安全保障義務は存在しないため、賠償責任を負う必要はないと主張してきました。

【見解】

会社には、賠償責任を負う義務がある。

先ず、サービスという観点からみて、会社はサービスの提供者として責任を負担する必要があります。社内に食堂を設置した最初の意図は従業員へ便宜を図るためであり、従業員へ福利を提供する手段であり、対外的に営業して、利益を得ることではなかったでしょう。しかし、これは会社と従業員との間に経営関係と有償のサービス関係が存在していないことを証明するのみで、会社と黄女史の間に経営関係と有償のサービスないことにはなりません。また黄女史と娘は「部外者」として食堂で食事を摂ることについて、事前に会社から同意を得ており、毎食1人当たり6元の食費ではあるものの、コストより若干高いため、お互いに「売買」と「有償」、「経営」と「消費」又は「サービス」という法的な特徴を備えていることを決定付けています。そして『消費者権益保護法』第18条には、「経営者は、提供する商品又はサービスが人身、財産の安全保障の要求に適合していることを保証しなければならない。」と規定されています。しかし黄女史が負傷したという結果は、正に会社が職責を全うしていなかったことを示しています。

次に、組織という観点からみて、会社は食事提供の組織者として、その責任を免れることは難しいでしょう。『権利侵害責任法』第37条は「ホテル、ショッピングセンター、銀行、駅及び娯楽場所等の公共場所の管理者又は大衆性活動の組織者は、安全保障義務を尽くさず、他人に損害をもたらした場合には、権利侵害責任を負わなければならない。」と規定しています。『人身損害賠償案件に法律を適用することに関する若干の問題についての最高人民法院の解釈』第6条も「宿泊、飲食及び娯楽等の経営活動その他社会活動に従事する自然人、法人その他組織が合理的限度範囲内の安全保障義務を尽くさないことにより他人をして人身損害を受けさせた場合において、賠償権利者がそれらのものに対し相応する賠償責任を負うよう請求するとき、裁判所は、これを支持しなければならない。」と指摘しています。会社は正に食堂の管理者及び食事提供活動の組織者であり、黄女史の言う経営者に属しており、なお且つ食堂は内部に設置されているとはいえ、同様に公共の場所に属し、会社の食事を摂るものに対して同様に安全保障義務があることを決定しています。その床が清掃により滑りやすくなっており、人を滑らせやすくなっていた状況で、水分の除去をしないだけでなく、何ら警告も行わず、生じる可能性のある損害に対し、任せきりであったか手落ちか避けられるものと簡単に信じてしまったかに関わらず、何れも安全保障義務を全うしていなかったことを意味しています。

(中工ネットより)

作成日:2015年09月21日