法律相談Q&A

持分譲渡の注意点と対策(2)

 前回、持分譲渡代金を如何に決定するか、企業所得税等の税金・費用を納付する必要があるか等についてご説明いたしました。今回は、譲渡側はどのようにすれば全額、速やかに持分譲渡代金を受け取ることができるかについてポイントを説明させていただきます。

 譲渡側(日本側株主)にとっては通常、持分譲渡における最も重要な目的は、速やかに全額、持分譲渡代金を受け取ることです。そのため、持分譲渡代金の期日通りの全額受け取りを譲渡側(日本側株主)が確保できるかどうかは、『持分譲渡契約』を締結、履行するうえで、最も注意が必要な事柄の一つです。

1.持分譲渡代金の支払時期と期限
 外資企業持分譲渡契約は、商務当局が持分譲渡を認可した後に効力が生じます。さらに中国においては外貨統制が実施されているため、中国国内の譲受側が海外へ送金するときは、外貨管理当局で関連する審査手続きを行わなければなりません。外貨管理当局の審査を受ける際には、一般的には上述した商務当局が当該持分譲渡に同意する旨の回答書が必要です。そのため、持分譲渡代金の支払時期を約定するときには、商務当局と外貨管理当局における審査、認可手続きに要する時間を総合的に考慮する必要があります。

2.支払時期を徒過した際の違約金の約定に関して
 株式譲渡契約において、支払時期を徒過した際に支払う違約金を約定することにより、譲受側に対して速やかに支払義務を履行するよう催促する効果をある程度期待できます。一方、中国の商業慣習や法律を知らないために、日本側株主が違約金の具体的金額やパーセンテージを約定することに対して困惑することもよく見られます。中国の契約法など関連法規の規定によると、違約金の金額は実際の損失よりも高く設定できるとされていますが、、明らかに高すぎる場合は認められない可能性があります。違約金の約定が合法、適当であるか否かについては、具体的な取引に基づいて判断することが必要です。

3.担保に関して
 契約に基づく譲受側の持分譲受を確保するために、譲受人に対して契約履行にかかる担保を要求することができます。担保の形式には(1)銀行保証状、(2)第三者が譲受側のために担保を提供、(3)譲受側が保有する建物、土地、株式などの資産に抵当権、質権を設定、などがありますが、実務において譲渡側(日本側株主)にとって最も有利、有効な担保は、「銀行保証状」といえるでしょう。

 そのほか、持分譲渡に伴う会社管理権の移行も非常に重要です。関連法規の規定によると、工商機関が新たな営業許可証の手続きを完了した日から、旧株主は株主資格を失うこととなります。しかし実務上は、譲受側はなるべく早期の管理権の移行実現を要求してきます。こうした場合、もし新たな営業許可証の手続きが完了する前に譲受側が会社の管理を引き継いだとしても、重大な紛争が発生した際の責任は譲渡側が負うこととなります。そのため、できるだけ工商機関が営業許可証の手続きを完了した後に、管理権の移行を行うべきです。また特殊な状況下では、双方の共同管理とする協議を締結することもできます。こうした協議書があれば、営業許可証の変更前の責任に関して明確に約定し、譲渡側が不必要な紛争に巻き込まれるのを避けることができます。

作成日:2014年04月24日