持分譲渡の注意点と対策(1)
世界経済が停滞傾向を示し、中国の労働力コストが上昇する等の影響を受け、在中日系企業も経営期間の満了前に解散したり、合弁会社の日本側株主が全ての持分を中国の他社に譲渡して撤退するというケースが増えています。持分譲渡の際に注目すべき問題と対策は、日系企業にとって大変重要であるため、経営者各位のご判断や実施の際の参考として、このコーナーにおいて2回に分けて簡単にご説明いたしたく存じます。今回は、以下の内容をポイントに説明させていただきます。
1.持分譲渡代金を如何に決定するか。
2.日本側株主は企業所得税等の税金・費用を納付する必要があるか。
持分譲渡の際、持分譲渡代金が最も中心的な問題になるケースが多いと思います。中国の『会社法』および関連法規では、国有持分の譲渡代金の決定方法に制限規定があることを除き、普通の持分譲渡代金の決定に関する具体的な規定はなく、一般的に譲渡側と譲受側が自由に持分譲渡代金を決定できます。なお、持分譲渡代金を決定するには、一般的に3種類の方法があります。
1.当事者間で自由な協議を行い決定する場合。
2.会社が工商登録登記した際の出資額を持分譲渡代金とする場合。
3.資格を持つ評価会社の評価額を持分譲渡代金とする場合。
また、持分は企業の過去と現在の価値を示しているだけでなく、主に将来の収益も示しております。したがいまして、持分譲渡交渉の際には評価会社による譲渡価格を交渉の基礎とするだけでなく、企業の収益能力、将来性、元々の顧客を引き継げるか等、持分の価値に重要な影響を及ぼす要素も考慮し、取引双方にて持分譲渡価格を最終的に決定されることをお勧めいたします。
持分譲渡価格が決定した後、『企業所得税法』および『企業所得税法を着実に実行することに関する若干の税収問題についての中国国家税務総局の通知』等の規定に基づいて、企業の持分譲渡による收入(貨幣か非貨幣かに関わらず)から当該持分の取得により生じるコストを控除した後の額を持分譲渡による所得とし、規定に基づいて企業所得税を納付する必要がございます。なお、納税は多くの法令の規定や政策規定に関わっているため、納税前に正確な計算を行うことは難しいですが、実務において持分譲渡では一般的に以下の3種類の価格が提示されます。
1.評価額
2.実際取引額
3.株主出資額
評価額と実際取引額が共に株主出資額より低い場合、当該持分譲渡では一般的に企業所得税を納付する必要がありません。評価額または実際取引額の何れかが株主出資額より高い場合、企業所得税を納付する必要があります。
次回は持分譲渡の過程における他の注意事項についてご説明いたします。
作成日:2014年03月25日