法律相談Q&A

新『会社法』について

Q.中国では『会社法』が修正されたと聞きましたが、最も注目すべき変更点について教えてください。

A.2013年12月、『中華人民共和国会社法』の修正案が可決され、新たな会社法が2014年3月1日から正式に施行される運びとなりました。

新会社法の最も注目すべき変更点として、以下の2点が挙げられます。

①登録資本は、実際払込み登記制から出資引受け登記制に変更となり、営業許可証上での実際の資金払込に関する記載が無くなりました。

②株主の出資について、会計事務所による出資検査および出資検査証明書の提出は不要となりました。

これらの変更点は今後、企業の債務返済能力と責任負担能力の判断を難しくさせるものとなることが予想されます。例えば、実際に振り込まれた資本が営業許可証に記載されなくなるばかりか、払込資本に対する出資検査も必要なくなるため、一部の株主が高額の資本を登記しながら、実際にはこれに満たない資本金で会社を設立するという事態を招き、このために当該会社の実際の債務返済能力を誤認してしまうというケースが生じる恐れもあります。 

上記の問題等への対応を含め、今般の改正に際して政府も新たなシステムを導入する予定ですが、日系企業の皆様におかれましては以下の2つのポイントにご留意いただきたいと思います。

 1.株主情報の分析を通じて会社の債務返済能力を総合的に判断

出資引受け登記制が実行されるとはいえ、株主が登録資本金を納付しなくて良いというわけではなく、工商機関が実際の資金の払い込みを基準として登記を行わなくなったというだけで、株主は依然として引き受けた資本の割合に基づいて会社経営リスクを負担しなければなりません。会社に債務紛争が生じたか、法に基づいて解散・清算するため、資本金を債務に当てられない場合、登録資本の不足分について、株主はその引き受けた出資額を限度として法的責任を負う必要があります。

この時、会社の債務返済能力の判断は、その一部を会社株主が引き受けた出資額および当該会社の株主の実力の判断に転化することができます。言い換えれば、任意の会社の債務返済能力を判断する場合、会社の引受け資本を見るだけでなく、更に重要な事として会社株主の実力を分析する必要があり、この二者を結合し、総合的に任意の会社の債務返済能力を判断しなければならないということを示すものです。

 2.市場主体信用情報システムが会社の債務返済能力の重要な参考に

2013年10月の中国国務院常務委員会会議の中で、李克強総理は、企業の与信制度の確立を推進することを提唱しました。具体的には情報の開示と共有等の手段の運用に注目し、企業の登記届出、年度報告(株主の実際払込みの状況、資産状況等)等を市場主体信用情報システムを通じて公示するというものです。現在、市場主体信用情報システムは開発中ですが、当該システムが完成した暁には、会社の債務返済能力を分析する上での重要な参考となります。

以上をまとめれば、出資引受け登記制および企業の実際の資金の払い込みを出資検査する必要がなくなった状況において、正確に会社の債務返済能力を判断し、会社の利益が損なわれることを防ぐためには、会社の引受け資本および会社株主の実力を見極め、総合的に判断するとともに、今後導入予定の市場主体信用情報システムを充分に活用する必要があるでしょう。

作成日:2014年02月25日