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開業医のブラックリスト作成、医師200万名に対し定期審査

 最近、陝西省富平で発生した医師による乳児の人身売買事件は、医師の白衣の天使というイメージを汚すものであった。中国医師会は、医師としての道徳観に著しい問題のある医師に対しては、『開業医法』の中に「医師になる権利を剥奪する。」という一項を加えるべきだとしている。新華社電が伝えた。

 国際製薬会社メジャーのグラクソ・スミスクライン社とサノフィ社では、中国において相次いで「賄賂事件」が発覚したと同時に、陝西省富平の婦幼保健院の医師による乳児の人身売買事件なども発生し、医師に対する良くないニュースが新聞紙上をにぎわしている。中国医師会法務部の鄧利強主任(以下「主任」と略称)は、京華時報記者の独占インタビューの際、「国家衛生計画委員会の委任を受け、当医師会は開業医に対する定期的な審査業務を正式に開始した。そして審査結果を公表すると同時に、医師が[審査に合格しなかった]理由も社会に公表する」と述べた。これは、2年に1回の審査において、医師の道徳問題で審査に合格しない医師を「ブラックリスト」に載せることを意味している。

医師会は、連続して3篇の文章を発表し、自ら浄化作用を促すことを呼び掛けた
 中国医師会は、開業医、医療助手および会員病院が自由意思で組織した全国的な非営利団体であり、現在地方医師会40箇所、専門の医師分科会39箇所、会員病院45院、医師会の会員数および影響力は全国でトップクラスである。8月6日と9日の両日、当該医師会は相次いでオフィシャルサイト上に3篇の文章を発表し、乳児の人身売買と医師が薬品販売においてリベートを取るという犯罪行為を譴責し、全国の医師へ自ら浄化作用を促すことを呼び掛けた。

 1999年5月1日に施行された『開業医法』では、開業医に対する審査は2年に1回行われ、県レベル以上の人民政府衛生行政機関より委任を受ける機関または組織は、『開業医法』および『医療機関従業員行為規範』に基づいて、開業医の業務能力、業務成绩および医師の道徳問題等の3方面について審査を行うと規定されている。主任は、原衛生部が発表した定期審査弁法に基づき、各地で開業医に対する審査業務を行うとしている。しかし現在各地での進捗状況にはバラつきがあり、ある地区では既に審査業務が開始されているが、結果の発表については完全に行われているとは言えないと述べている。

200万名の医師情報が控えを残し届出られることになる
 主任によれば、2ヶ月前の時点で中国医師会は国家衛生計画委員会より、開業医の医師審査について具体的な事務を担当する委任を受けたという。即ち各地の衛生行政機関に登録されている開業医に対する2年に1回の審査を制度化し、これを推進し、なお且つ結果を社会に公開すると述べている。

 「中国医師会では、審査の結果を公開すると共に、審査に通過しなかった理由についても公開する計画です。なぜなら業務能力が審査に合格しないことと、著しい道徳問題で審査に合格しないことは完全に異なるからです。」主任は次のように述べる。「どの観点から述べても、医師に道徳問題が発生することは肩身が狭いことです。医師の聖職者としての純潔さを確保し、医療行為の尊厳を維持するため、現在当該医師会では医師の道徳問題を審査して「ブラックリスト」を作成することを計画しています。もし審査の結果、医師に確かに道徳問題がある場合、「ブラックリスト」に載せて、医師会より全ての医療機関へ当該医師を採用しないよう建議するようにします。」主任は、当該計画について国家衛生計画委員会の決裁を仰ぐという。

 現在、中国の開業医の人数は200万名を超えている。一旦「ブラックリスト」制度が確立すれば、200万名余りの開業医情報が全て「控えを残し届出」られることになる。道徳上問題のある医師は、他の地区で開業するか、地方の衛生機関または医療機関に紛れ込んだとしても、関連する情報サイトを検索しさえすれば、「過去に問題があったこと」が一目瞭然となる。

「医師になる権利を剥奪する。」という一項を加えるべきである
 
主任は、率直にこう話す。「現行の『開業医法』では問題のある医師から医師になる権利を剥奪する規定は設けられていません。陝西省富平の乳児人身売買事件を契機に、これに関連する規定の必要性が認識されるようになりました。」また、「今回の事件は、多くの医療関係者に警鐘を鳴らすものです。医療関係者は、職業倫理を打ち立て、自己管理を行い、道徳レベルとサービスレベルを向上させ、患者のためにより良い医療サービスを提供しなければなりません。徳育の面では、原国家衛生部、国家食品薬品監督管理局、国家中医薬管理局より2012年7月に『医療機関従業員行為規範』が公布されています。医師は当該『規範』を真摯に実行し、それに基づいて自ら望んで行動すべきです。これと同時に立法レベルでも医療面での劣悪な事件の発生を根絶しなければなりません。」と述べる。

 中国医師会は、こう呼びかけている。今回の事件は全ての医療機関に啓示を与えるものである。医療機関は、制度を確立することにより医療における危険行為と悪質な事件の発生を減少させると共に、衛生行政機関の医療機関制度に対する執行の状況への監督および多くの医療関係者への教育と管理を強化し、医療道徳の鏡として、誠心誠意患者の為に優良なサービスを提供しなければならない。

インタビュー:中国医師会の法務部鄧利強主任

審査を通過しない医師は再教育を行った後に就労できるようにする
京華時報記者(以下「記者」と略称):なぜ開業医の「ブラックリスト」を作成することを思いついたのでしょうか。
鄧利強主任(以下「主任」と略称):主に情報の透明化という観点に基づいてのものです。各地の審査制度と公表制度が促進され、整備されてくるに伴い、医師の開業情報もインターネットを通じて検索できるようになるはずです。この数日、医療関係者による規則違反事件が相次いで発生したため、我々は改めて医師の職業倫理と業界の自己浄化の重要性を提起し、再び多くの医療関係者が職業倫理を発揮し、商業賄賂に抵抗する自覚と清潔な医療意識を高めなければならないと考えています。

記者:「ブラックリスト」の作成にはタイムスケジュールがあるのでしょうか。情報は、全国規模でのオンライン化が実現するのでしょうか。
主任:各地で使用されているソフトシステムにバラつきがあるため、全国規模のオンライン化を実現するには一定の困難があります。しかし情報化の時代ですから、異なる場所で開業医が登録した時でも、現地の医療機関が当該医師の原開業地での関連情報システムにログインしさえすれば、当該医師の全ての情報を見る事ができるようにします。便利さという点では全国規模でのオンライン化には及びませんが、調査できるという点では良いのではないかと思います。

記者:一旦開業医が審査を通過せず、「ブラックリスト」に載せられると医師になる権利を剥奪されるという結果に直面するのでしょうか。
主任:運転手が免許証を取り上げられるのと同様に、再教育と研修を受け、審査に合格しさえすれば、再び開業することが可能です。『開業医法』に基づいて、審査に合格しなかった医師は、県レベル以上の人民政府衛生行政機関より3ヶ月から6ヶ月の期間、一時的に医師免許を停止し、なお且つ研修と医学教育を継続して受けることが命じられます。免許停止期間の満了時に、再度審査を行い、審査に合格した場合、開業を継続することが許されます。審査に合格しなかった場合、県レベル以上の人民政府衛生行政機関より登録を抹消され、医師免許が没収されます。

記者:「ブラックリスト」を作成することに抵抗はないのでしょうか。
主任:あります。強調すべきことは、この「ブラックリスト」と開業医師証の審査に通過していない理由を公表すると同様に、我々の現在の計画を真に着実に実行するには、国家衛生行政機関が同意する必要があります。この計画の制定の過程において、既に医師と病院から反対がありました。それは医師が審査に合格しないのは様々な客観的な理由によるというものです。具体的に不合格の理由を公開した場合、医師のイメージと今後の開業生活に影響を及ぼすことになります。しかし我々は、公開する理由が公開の本体の意味に適合していれば、一般大衆には医師が審査に合格しなかった理由は何かということを知る権利があると考えます。

記者:発表の方法はどうなりますでしょうか。医師会のオフィシャルサイトでしょうか。
主任:現在、情報化の迅速な発展により、我々は多くの方法により公開することが可能です。しかし、如何なる方法を採用するにしても、一般大衆は最終的にこれらの情報を得ることが可能となります。

記者:医師の道徳問題には、何が含まれるでしょうか?
主任:医師が商業賄賂を受領し、職務上の便宜を利用し、違法に患者の金品またはその他の不正な利益を得るか、自然災害、伝染病の流行、突発的な重大死傷事故に遭遇するか、その他著しく人々の生命と健康を脅かす緊急事態において、派遣命令に従わず、「敵前逃亡」する等の明白な問題があった場合も、医師の道徳問題に該当します。

賄賂スキャンダルは、医師のイメージを損うことに


【事件再録】多国籍医薬メーカー、グラクソ・スミスクライン社の賄賂スキャンダルが暴露された後、8月8日に世界医薬メジャー・フランスサノフィ社は、また業界内の「内部告発」に遭遇した。2007年11月前後、北京市・上海市・広東省・杭州市の4地区79箇所の病院の医師503名が当該会社から所謂「研究費」として169万元を受け入れた。このほかサノフィ社は、北京地区の別の病院5箇所の合計43名の医師へ賄賂を渡し、毎月現金での精算、プレゼント贈答等の方法を通じ、2万元余りのリベートを渡した。

【医師会の態度】主任は、如何に医療界と薬品メーカーの不正な付き合い、薬品価格の吊り上げ、人々の利益を損なうことを避けるかが、全社会が考えるべき問題であると述べた。原国家衛生部、中医薬管理局と食品薬品監督管理局が共同で『医療機関従業員行為規範』を制定したのは、医師の行為を制度化することにより、職業賄賂の発生を防止するためである。

「残念な事に、最近の中国医薬品市場では、商業賄賂に関するニュースが幾度となく暴露されている。こうした行為は確かに医療関係者のイメージに影響を及ぼしている。」医師の職業道徳の神髄は、人間中心、生命への畏敬の念、患者へ真心をもって接することである。薬品生産メーカーの生存は、利益と切っても切り離せない。しかし、薬品そのものは利益のために存在しているのではなく、その最終目的は人を苦痛から取り除くことである。主任は次のように述べる。「利益のために医師の職業道徳と薬品の存在という究極の目的を放棄するような行為は、抑制されるべきである。」

「譴責」という言葉だけでは、乳児の人身売買に対する軽蔑の思いを表現しきれない

【事件再録】今年7月17日、陝西省の農民来国峰の妻が富平婦幼保健院で乳児を出産した。当該院産婦人科の張素霞副主任は、当該乳児が病気であり、両親へ男児を埋葬すると騙して、実際には2.1万元で人身売買した。8月4日未明、乳児は河南の農民の家で警察により救助された。事件発生後、張素霞副主任を含む複数の容疑者が逮捕された。

【医師会の態度】主任は、この事件の発生は、病院のマネジメントが混乱していることと、極めて少数の医療関係者の道徳観の乱れが共同で作用した結果だと考えている。主任は、先ず医療管理制度上から述べて、新生児の出生、退院には一連の手続きがあり、新生児が不正常に退院した場合、転院か死亡かハッキリせず、乳児が訳もいわれも無く消えたというケースが発生すべきではないという。次に、新生児が障害を持って生まれたとしても、障害児出生申告制度に基づいて履行しなければならない。今回の事件において、院長と副院長2名が免職となっても市民の義憤は治まらず、病院の上層部が汚職罪に該当するか否かについては更に一步検討する必要があると思われる。

主任は言う。今回の事件において張素霞副院長の道徳観の乱れは、一体どの程度になったら、乳児を埋葬するという考えになったのか考えもつかない。中国医師会は「譴責」という言葉だけではこの種の行為への制裁にはならないと思う。関係者を法的に制裁することより永遠に医療界から取り除くという合理的な訴えを満足すべきであろう。

(京華時報より)

作成日:2013年08月26日