最新法律動向

信号無視の取締り強化

 「中国式道路横断」は、現在史上最も厳しい取締りを受けている。最近、杭州、南京、上海、北京等の地域で集中的に歩行者の信号無視に対する反則金等の取り締り活動が行われた。北京市だけで1ヶ月間の歩行者、非機動車(自転車等)に切られた反則キップの枚数は2万枚を突破した。反則金を科すことで、人々が慣れっこになっている信号無視という悪癖を途絶することができるのだろうか。中国人は、どうしたら自ら「中国式道路横断」に「ノー」と言えるようになるのだろうか。以下は、公安部交通管理科学研究所の所長である王長君研究員が、中国青年報記者のインタビューに答えたものである。

反則金は、公安交通管理機関の目的ではない
記者:最近、多くの場所で歩行者の信号無視に対する処分が行われていますが、これには法的根拠があるのでしょうか?

王長君研究員(以下「王氏」):2004年、歩行者の信号無視に対する法的な処分規定が既に設けられました。中国の『道路交通安全法』第89条には、「歩行者、乗客、非機動車運転者が道路の交通安全に関する法律、法規に違反した場合、警告処分とするか5元以上50元以下の反則金を科す。」と規定されています。
 中国は、現在急速なモータリゼーションの発達段階にあります。しかし一般大衆には歩行者が信号無視することは違法なのかという認識は欠けています。各地の交通管理機関で反則金を科したことがありますが、従前の取り締りにおいては、大衆の理解不足でこれに抵抗するという事もありました。最近では、各地での取り締まりが厳格化され、強化されているため、一般大衆も注目するようになったと思います。

記者:一般大衆の認識不足は、これまで違法リスクが低かったからでしょうか?

王氏:大衆の潜在意識には、歩行者が信号無視しても大したことがないという考えがありました。これは20年前、所構わず痰を吐くことが当たり前だったのに似ています。20年間の努力の結果、現在都市で痰を吐く人は少なくなりました。歩行者か自動車かに関わらず、信号無視は交通安全法違反であり、単純な所謂「規則違反」ではありません。信号無視は、その他の違法行為と同様に、国の法律に抵触することなのです。

記者:信号無視に反則金を科すことに効果はあるでしょうか?

王氏:反則金を払わせることは、公安交通管理機関の目的ではありません。目的は、交通関係者の交通安全意識を高め、交通法規を遵守させ、優良な交通秩序を作ることにあります。反則金を科すのは、一般大衆の法に対する意識を強化するためであり、そのため処分の措置も反則金を科すだけとは限らないのです。

記者:他には、どのような措置を講じているのでしょうか?

王氏:各地で様々な手段が講じられています。例えばある地方では、交差点で歩行者が信号無視する様子をカメラで撮影しています。中国人は面子を気にしますので、大多数の違反者は面子を失うと感じて、撮影される時に手で顔を覆います。次に信号無視しようとした時には、その時のことを思い出し信号無視をしなくなるのではないかと思います。

交通違反行為の反則金は、全て地方財政のために利用される
記者:最近メディアで交通警察官による取締りが妨害にあっているというニュースが流れました。例えば、南京の歩行者は交通警察官と口論し、「毎日数百メートルも迂回していたら人生の無駄だ。」と言いました。このような状況に遭遇したらどうすれば良いでしょうか?

王氏:このような屁理屈は厳しく処分すべきです。他の違法行為で、こんな詭弁が許されるでしょうか?多くの人は様々な理由をこじつけて、自分がやむを得ず信号無視するのだと言い張ります。例えば「急用があるんだ」とか、「車が道を譲ってくれないから」とか、「青信号の時間が短い」など。ただし、どんな理由があるにせよ違法行為を犯してはならず、他人が信号無視するからといって、自分もマネして違法行為を犯してはならないのです。違法行為をした場合には処分を受けるべきです。

記者:交通警察官による信号無視取締り行為は、きちんと監督されているのでしょうか?

王氏:公安交通管理機関は、現場での処分に一連の厳格な規定を設けています。例えば北京の交通警察官は、違反者に「行政処分現場反則金徴収専用受取書」を発行し、受取書上には取締りを行った警察官の印鑑が捺印され番号が記入されています。交差点において、自動車運転者、歩行者、その他のその場の交通に係わる者全員が、交通警察官の信号無視の歩行者への処分を目撃するのですから、これが最良の監督だと思います。

記者:歩行者の信号無視反則金の用途は公開されるでしょうか?

王氏:交通違反行為の反則金は、全て地方財政のために利用されます。反則金の多寡と反則金の使用には直接的な関係はありません。そして地方財政により、まとめて交通インフラ施設、安全施設、管理施設の建設、整備および改善に利用されます。 

記者:現在多くの大衆は、歩行者の信号無視に対する処分が形だけの「一斉取締」に変質することを心配しています。

王氏:数年前「飲酒運転に刑事罰を適用」した当初と同様、大衆は法執行の効果に疑問を抱いていました。飲酒運転および飲酒運転により惹起される交通事故の件数が減少するに伴い、大衆も法執行者を見直すようになりました。歩行者の信号無視が明らかに減少するには、こうした手順を踏む必要があります。大衆の意識と行為を変えるには、単に取締りに頼るだけでは充分ではありません。政府と社会による持続的な広報・教育、大衆の法律遵守への意識強化が必要です。子供からお年寄りまで、道路横断は信号の指示に従い横断する。そうしなければ違法なのだという意識を育てる必要があります。 

記者:「中国式道路横断」解決のためには、他にどのような措置が必要でしょうか?

王氏:自動車運転者に対する取り締まりと広報・教育はセットで行う必要があります。例えば、自動車が交差点で右折する場合、横断歩道の前で歩行者を優先しなければなりません。一部の交差点の設計、信号の位置と時間設計、交通安全施設の建設の整備は、改善が待たれます。都市の道路計画建設および交通管理関係機関は、問題のある交差点、信号をしらみつぶしにチェックし、信号の時間設計を優良化し、安全地帯を設置して歩行者の「二次通行」に便宜を図る等、より合理的、人間的なエンジニアリング技術手段を通じて、歩行者が規則に従って道路横断をすることを実現しなければならないと思います。

(中国青年報)より

作成日:2013年05月23日