最新法律動向

中国全土で95箇所の環境保護法廷を設置

 現在、中国には95箇所の環境保護法廷が設置されている。しかし、全人代環境資源委員会法案室の翟勇主任は、「但し、長期間に渡って、中国の環境についての司法は立ち遅れており、毎日のように環境汚染事件が発生しているにも関わらず、司法機関が判決を下した案件は数えるほどしかない。」と、環境司法が立ち遅れている重要な理由は、専門的な環境司法に関する立法が欠けているからだと述べた。

 11月17日から18日迄、環境保護部の下部機関である中華環境保護聯合会と中国海洋大学は、共同で「第一回環境法模擬法廷」を開催した。閉幕したばかりの中国共産党「第18回大会」の会議上、生態環境を建設するという方針が打ち出された。主任は、会議の席上で、生態環境の破壊は、最も著しい環境破壊であり、自然環境への根本的な破壊であり、生態環境を破壊する行為には、環境行政による処分だけでは充分ではなく、生態環境を回復するという根本的な要請を満足させることはできないと述べた。「環境司法は、生態環境を建設する重要な手段及びその基礎である。」翟主任は、このように述べた。同氏は、行政処分は、行為に対する罰であり、民事損害賠償は結果に対する罰であるため、幾ら破壊したかに基づいて賠償し、どのように破壊したかにより賠償するものであると認識している。行政処分の金額には限りがあり、民事賠償の金額は巨額に上る。破壊と賠償は対応関係にあり、破壊対象に対して有効に補償するものである。しかし環境民事損害賠償は、主に環境司法活動であり、環境行政処分は、主に行政法執行行為である。主任は環境司法は、生態環境保護に対し、最も有効な手段であると言った。また、「中国で発生した最初の環境損害賠償公益訴訟案件は、天津海域で発生した塔斯曼海号污染事件だった。この事件の最終判決は、人民幣300万元余りの賠償金の支払いであった。しかし、同様の事件がカナダで発生し、アメリカがカナダ海域を汚染した場合、最終的な賠償額は、十数億米ドルになっただろう。この案件の判決結果は、司法機関の責任とは言えない。鍵となる問題は、司法機関が根拠とできる法律条項に限りがあることである。」と話した。

 翟主任は、3つの理由を重視しなければならないという。現在までに、中国の環境に関する立法には大きな進展があったものの、環境司法についての制度化は充分でないところがあり、現在の環境司法に関する法律規定はまとまりがなく、専門の法律は主に権利侵害責任法の中の環境権侵害に関する規定、海洋環境保護法の海洋污染賠償責任及び主体等に関する有限規定、憲法、物権法及び若干の資源に関する一部資源に関する法律の自然資源の権利規則及び使用権問題に関する規定だけである。「環境損害賠償に関する専門の法律規定が欠けており、環境損害賠償の証拠取得に関しては、責任の認定及び割当制度等で何れも専門の規則規定が欠けているため、環境権利侵害という特殊な権利侵害行為とこれに相応する法的な制裁手段が実行できないでいる。」主任は、環境司法立法業務を強化し、完備されることが待たれると言った。 

 翟主任は、環境司法のレベルを引き上げるには、先ず環境科学技術レベルを急速に引き上げる必要があると言った。主任は、現在、中国の環境責任の認定に関する技術研究は立ち遅れており、「技術的な支えが無ければ、環境権利侵害の証拠の取得、責任の認定及び割当は、何れも困難である。」と述べた。この他、司法機関は環境司法業務の向上を重視し、自らを完備し、建設及び理論研究面で環境司法自身の建設を強化することを提案していた。

 中華環境保護聯合会の曾暁東秘書長は、現在、環境司法案件の調査、審判及び執行過程に確かに若干の問題が存在していると述べた。こうした問題には、環境司法専門人材の不足が含まれる。曾秘書長は「率直に言って、生態環境保護を理解しており、司法の専門知識がある裁判官が不足している。」と述べた。

 南開大学、山東大学等を含む中国全土12箇所の大学生及び中国全土の環境保護法廷から集まった裁判官20名が第一回環境法模擬法廷に出席した。この裁判官20名は、同時に模擬法廷の評定委員も担当した。曾秘書長は「環境法模擬法廷の目的は、司法を改革し、生態環境案件の司法段階におけるブレークスルーを促すものだ。」と話し、翟主任は「中国は環境司法業務を重視し始めました。将来の司法業務は、今より必ず良くなる筈です。」と今後への期待を述べた。
( 法制ネットより)

作成日:2012年11月28日