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世帯毎に個人所得税を徴収するための準備開始

 去る3月22日、国務院は国家発展改革委員会へ『2012年に経済体制改革を更に進めることに関する重要業務についての意見』を伝えた。財政体制改革を更に進める問題について、全国人民代表大会及び中国人民政治協商会議の席上では、各界が関心を寄せている個人所得税の改革問題は取り上げられなかった。しかし、これは「世帯毎の徴税」を核心とする個人所得税改革業務をペースダウンしたことを意味していない。国の関連部門は、2012年から開始する予定の全国規模での地方税務システムの個人情報ネットワーク化について既に準備を完了している。これによって「世帯毎の個人所得税徴収」改革のための技術的な準備が完了した。その実施を前にして、どのように別々の地区に住む同じ家族の構成員の収入を集計するかが、世帯毎に個人所得税を徴収するという改革における最大の技術的な課題となっている。

多くの部門が情報共有の実現を求めている
 
地方税の個人情報の全国ネットワークは、「世帯毎の総合的徴収改革」を行うための前提条件である。全国の主要都市の個人住宅情報、住宅積立金情報、低所得者向け住宅情報のネットワーク化作業が粛々と進められたことに続き、全国の地方税務システムの個人情報のネットワーク化も2012年には全面的に開始することができると見込まれている。財政部財政科学研究所の劉尚希副所長は、この情報を裏付けるように「現段階の個人所得税の改革は税制上の問題ではなく、既に技術上の問題となっている。」と述べた。これまで、個人所得税は個人を単位として徴収が行われ、「収入の発生した場所での徴収」という徴収方式が実行されてきた。これに対して「世帯を単位とした総合集計徴収」は、一世帯を単位とし、家族の全構成員の収入を集計した後、個人所得税をまとめて徴収するものである。

 この場合、中国に多い「本籍地と現住所が一致しないこと」や「他地方での収入」が問題となる。即ち、「世帯を単位として個人所得税を総合的に集計徴収する」といった徴収方法では、異なる場所に住む家族の構成員の収入情報をどのようにして集計し税金を計算するのかが、技術問題の最大の鍵となる。地方税の個人情報の全国ネットワーク化の実施がこの問題を解決する現在最も現実的な手段である。「例えば私が北京で納税申告をしても、全国各地で発生した収入がある。私の全国各地で発生した全収入を把握することができる全国ネットワークのデータベースがあるなら、納税申告の際、一括計算できる。こうしてこそ初めて総合税徴収が実現する。」と中国社会科学院財貿所税収室の張斌主任は述べた。

 この問題について、国の関連部門は以前から検討していた。2009年、国税局はこの問題についての文書を配布し、全国各地の税務局へ個人所得税の情報データをネットワーク化するよう求めたことがある。しかし、この文書が配布されてから3年後、全国地方税についての個人情報ネットワーク化が再度行われることになった。しかし現在のところ全国統一のネットワークがまだ確立されていない。

既に一部の都市ではテストが可能に
 
現時点では、個人所得税改革は一斉に全国展開することはできないが、経済的な条件が発達している一部の地域では、個人所得税改革をテスト的にスタートさせることができる。個人所得税の「世帯を単位として個人所得税を総合的に集計徴収する」改革は、まだ技術上の準備段階ではあるが、大方の専門家及び学者は、既に一部の都市はテスト的に実施する条件を備えていると見ている。

 かつて北京税務部門の職務に就き、現在は国務院参事官であり中央財政経済大学税務学院の劉桓副院長は「2004年及び2005年に、北京の個人所得税情報は既に大多数のサラリーマン層をデータ化し、上述の総合税制を実施する条件を備えている。例えば、北京、上海、深圳、広東、蘇州等の都市でテスト的に総合税制を行い、その経験をフィードバックしていけば、個人所得税の総合税制改革を行うことが更に容易になると思われる。経済的な条件が良い一部の地域では、個人所得税の改革をテスト的にスタートさせることができる。」と述べた。

 しかし、劉桓副院長は「これらの都市はテストを行う条件を備えているけれども、総合的な改革はスタートしていない。国の立法部門、財政部及び地方法規が適切な制約を設けてこそ、初めて実施に踏み出せるだろう。現在、主に国家の発展のスピードという点から見て、関連部門が改革を急ぎ過ぎた場合、却って推進に影響が生じるのは必至で、その場合、これらの都市も影響を受けるだろう。」とも述べている。

 中国の社会科学院財政経済戦略研究院の高培勇院長も、テストの際に調整の視野に入れる住民の収入は、一項目に限らず、総合的な収入にするという。収入源が日増しに多様化するという実情に鑑み、総合集計徴収の確立を基礎とした個人所得税の調整は、更に住民の収入配分格差に基づいた現実的な調整に近づけることになるに違いないと思われる。

(済南日報より)

作成日:2012年04月05日