『中華人民共和国婚姻法』適用に関する若干の問題についての最高人民法院による解釈(3)
(2011年7月4日最高人民法院審判委員会第1525回会議通過)
より正確に既婚家庭における紛争案件を審理するため、『中華人民共和国婚姻法』、『中華人民共和国民事訴訟法』等の関連する法律規定に基づき、人民法院が婚姻法を適用する際の諸問題について、以下のとおり解釈を行う。
第1条 当事者が婚姻法第10条に規定されている以外の理由で婚姻の無効を宣告された場合、人民法院は、当事者による申請を却下する判決を下さなければならない。
当事者が結婚登記のプロセスに瑕疵が存在することを理由として民事訴訟を提起し、結婚登記の撤回を主張する場合、法に基づいて行政再議を申請したか、行政訴訟を提起したことを告知することができる。
第2条 夫婦の一方が人民法院に親子関係が存在しないことの認知請求を行い、なお且つ既に必要な証拠を提供して証明を行い、他方が反証を行わずに、親子鑑定も拒否した場合、人民法院は、親子関係が存在しないということの認知を請求する側の主張が成立すると推定することができる。
当事者の一方が親子関係の認知請求を行い、なお且つ必要な証拠を提出して証明を行い、他方が反証を行わずに、親子鑑定も拒否した場合、人民法院は、親子関係が存在するということの認知を請求する側の主張が成立すると推定することができる。
第3条 婚姻関係が存続する期間、父母双方又は一方が子女の養育義務を履行しない場合、未成年又は独立した生活を行えない子女から養育費の支払うを求める請求があった場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
第4条 婚姻関係が存続する期間、夫婦の一方から共同財産を分割する請求が行われた場合、人民法院は、これを支持しない。但し、下記の重大な理由が存在し、なお且つ債権者の利益を損ねない場合を除く。
(1)一方が夫婦の共同財産を隠匿、移動、現金化、損壊、浪費するか、夫婦の共同債務を偽装する等夫婦の共同財産にかかる利益を著しく損ねる行為を行った場合。
(2)一方が法定の扶養義務を有する者が重大疾病に罹り治療を必要としているにも関わらず、他方が関連する医療費の支払いに同意しない場合。
第5条 夫婦の一方の個人財産が結婚後に生じた収益については、利益及び自然に価値が増加した場合を除き、夫婦の共同財産と認定しなければならない。
第6条 婚前又は婚姻関係の存続期間、当事者が一方の所有する不動産を他方に贈与すると約定したものの、贈与側が不動産贈与変更登記を行う前に贈与を取り消し、他方が当該贈与の継続履行を行う判決を請求した場合、人民法院は、契約法第186条の規定に基づいて処理する。
第7条 結婚後に一方の父母が子女の為に不動産を購入し、その不動産登記が出資者の子女の名義である場合、婚姻法第18条第(3)号の規定に基づいて、自己の子女一方のみに贈与したものと見なし、当該不動産は、夫婦一方の個人財産として認定しなければならない。
双方の父母が出資した不動産を一方の子女の名義で不動産登記した場合、当該不動産は、双方が各自の父母の出資割当に基づいて共有するものと認定する。但し当事者間に別途約定のある場合を除く。
第8条 民事行為能力のない者の配偶者に、虐待、遺棄する等、民事能力のない相手の人格権又は財産権を著しく損なう行為があった場合、その他の後見資格を有する者は、特別な手続きに基づいて後見関係の変更を求めることができる。変更後の後見人は、民事行為能力のない一方の代理人として、離婚訴訟を提起することができ、人民法院は、これを受理しなければならない。
第9条 夫は、妻が無断で妊娠中絶を行い、その出産権を侵害したことを理由として損害賠償を請求した場合、人民法院は、これを支持しない。夫婦双方が出産するか否かで紛争が発生し、夫婦間の愛情に亀裂が生じ、一方が離婚を請求し、人民法院の調停が不調に終わった場合、婚姻法第32条第3項第(5)号の規定に基づいて処理しなければならない。
第10条 夫婦の一方が結婚前に不動産売買契約を締結し、個人の財産によって頭金を支払い、なお且つ銀行貸付を受け、結婚後に夫婦の共同の財産を用いて貸付金の返済を行っていながら、不動産登記は、頭金支払い側の名義となっている場合、離婚の際に当該不動産は双方が協議により処理する。
前項の規定によっても合意に至らない場合、人民法院は、当該不動産は不動産登記側に帰属すると判決を下し、未返済の貸付金は不動産登記をする側の個人債務とすることができる。双方が結婚後に共同で貸付を行っていた金額及びそれに相応する財産の増加部分については、離婚の際、婚姻法第39条第1項が規定する原則に基づいて、不動産を登記する側が、他方に補償を行う。
第11条 一方が他方の同意を得ずに夫婦共同共有である不動産を売却し、善意の第三者がこれを購入し、合理的な対価を支払って不動産手続きをした場合、他方が当該不動産の返還を主張したとしても、人民法院は、これを支持しない。
夫婦の一方が無断で共同共有の不動産を処分して他方に損失を齎し、離婚の際に他方が損失の賠償を請求した場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
第12条 婚姻関係が存続する期間、双方が夫婦の共同財産を出資して一方の父母の名義にて住宅制度改革による不動産を購入し、不動産登記を一方の父母名義で行った場合、離婚の際、他方が夫婦の共同財産であるとして当該不動産を分割することを主張した場合、人民法院は、これを支持しない。当該不動産購買時の出資は、債権として処理することができる。
第13条 離婚の際に夫婦の一方が定年退職していないため、養老保険金を受領する条件に適合せず、他方が夫婦の共同財産として養老保険金の分割を請求した場合、人民法院は、これを支持しない。ただし、結婚後に夫婦の共有財産として養老保険費を納付し、離婚の際に一方が養老金口座の中の婚姻関係が存続していた期間の個人が実際に納付した部分を夫婦の共有財産として分割を主張する場合、人民法院は、これを支持しなければならない。
第14条 当事者は、離婚登記又は人民法院での協議離婚を条件とした合意した財産分割協議について、双方による協議離婚が成立せず、一方が離婚訴訟中に翻意した場合、人民法院は、当該財産分割協議は発行していないと認定し、なお且つ実際の状況に基づいて、法に依り夫婦の共有財産に対する分割を行わなければならない。
第15条 婚姻が存続する期間、夫婦の一方が遺産相続人として法に基づいて相続した遺産について、相続人の間で実際の分割が行われておらず、離婚訴訟を提起した際に他方が分割を請求した場合、人民法院は、当事者に相続人の間で実際の分割が行なわれてから別途訴訟を提起すると告知しなければならない。
第16条 夫婦間で借款協議を締結し、夫婦の共有財産から一方が従事する個人的な経営活動又はその他の事務の為に貸した場合、双方が夫婦の共有財産の処分を約定した行為と見なさなければならない。離婚の際には、借款協議の約定に基づいて処理することができる。
第17条 夫婦双方いずれにも婚姻法第46条が規定する過誤が存在し、一方又は双方が相手側に対して離婚損害賠償を請求した場合、人民法院は、これを支持しない。
第18条 離婚後、一方が夫婦の共有財産が処理されていないことを理由として人民法院に分割請求を行い、審査の結果、確かに当該財産が離婚の際には、夫婦の共有財産とされていなかった場合、人民法院は、法に基づいて分割しなければならない。
第19条 本解釈が施行された後、最高人民法院が以前に作成した関連司法解釈と本解釈に齟齬が生じた場合は、本解釈を基準とする。
作成日:2011年10月13日