朗報:企業に対する行政検査規則に変化 -NEW-
2025年1月3日、国務院弁公庁は『企業関連行政検査の厳格な規範化に関する意見』(以下『意見』という。)を発行しました。これにより、企業に対する行政検査規則に変化が生じる可能性がありますので、今回は日系企業の皆様にポイントをご説明いたします。
1.行政検査事項の内容を事前に知るためのルート
これまで、一部の企業は行政機関から行政検査を受ける前に、政府部門がどのような事項を検査するのかを知らない場合がありました。
本『意見』の施行後、政府当局は行政検査項目のリストを作成し、一般に公表すると思われます。これにより、企業は政府のオフィシャルサイトなどを通じ、自分の会社がどのような事項を検査される可能性があるのかを知ることができ、合理的な予測と想定を行うことができます。(『意見』第3条)
検査を受ける事項が公開事項に属さないことが判明した場合、企業は適法な手続により異議を提出し、行政機関に説明を求めることができます。
2.企業への行政検査の回数に対する上限規制
これまでは同じ事項について異なる部門または異なるレベルの行政部門から何度も検査を受けることがあり、これは正常な経営への負担となることがありました。
本『意見』では、多様な措置により合理的な検査方法を決定することが示されています。例としては以下のような措置が挙げられます。
① 複数の行政部門が共同で検査できる場合には、共同で検査を行い、検査を重複させない。
② 書面による検討審査や情報共有、スマート監督管理などの方式により監督管理ができる場合には、企業への立ち入り検査は行わない。
③ 同一の年度内において、同一の行政機関が同一の企業に対し行政検査を実施する回数に上限を設ける。
上記③については、2025年6月末までに政府主管部門が決定し、公表すると思われます。(『意見』第4条)
但し、原則的に企業への行政検査回数に上限が設けられたとはいえ、実務上、一部の行政機関が苦情申立てやデータモニタリングなどの手がかりに基づき、行政検査が必要であると認める場合には、上記の年度検査回数の上限規制を超えて検査が行われる可能性があることには注意が必要です。
3.行政検査基準及び手続の不統一に対する規制
一部の地域では、行政機関が検査を行う際、企業によって異なる検査基準を用いることがありました。本『意見』では、2025年6月末までに国務院の関連主管部門がこの分野における行政検査基準を整理するであろうことが示されています。(『意見』第5条)
中国法解釈の観点から見ると、本『意見』は行政機関の法律執行プロセスを細分化していることがわかります。例えば、行政検査の実施前には検査案を策定し、行政の法執行主体の責任者に報告して承認を得なければなりません。検査の際、執行担当者は自発的に法執行証明書を提示しなければならず、その他の業務証明書などをその代わりとすることはできません。
これらの具体的な手続を知らないために、企業の権益を損なってしまうことを避けるため、日系企業は関連行政機関が行政検査を実施する際の具体的な手続及び検査規則について、正しく理解する必要があります。
◆ 日系企業へのアドバイス
本『意見』は、行政の法執行主体が企業に対し行政検査を行う際の規則及び手続を規範化することを主たる目的としています。今後、国務院の関連主管部門より行政検査基準が公表されると思われますので、現地日系企業は、コンプライアンス上のリスクを回避するためにも、この分野の行政検査基準に留意し、会社の経営状況を社内で検査することをお勧めいたします。
検査基準及び法執行手続を正しく理解していれば、検査基準が不明確、公表された基準に適合していない、または検査手続が完全でないなどの場合に、適法な手続により、担当者に説明を求め(例えば、法執行証明書の提示、検査基準の説明など)、正式な回答を得た後に、調査に協力するなどの対応を採ることが可能となります。
作成日:2025年02月19日