新個人養老金制度について(外国籍者個人編) -NEW-
12月12日、人力資源社会保障部、財政部、国家税務総局、金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会より、『個人養老金制度の全面実施に関する通知』(以下、「通知」という。)が公布されました。同通知では、36都市で既に先行試行されていた中国の個人養老金制度を2024年12月15日より全国規模に拡大し実施することが発表されました。
中国の養老金制度の第三の柱である個人養老金制度の全面的実施は、中国現地企業及び中国で就労する中国籍及び外国籍人員のビジネスライフと年金生活に影響を与えることから、今回は個人養老金が外国籍者に与える影響について簡単に解説いたします。
1.中国の外国籍従業員は加入できるか?
同通知によると、個人養老金制度に加入できるのは中国国内で都市部従業員基本養老保険または都市·農村住民基本養老保険に加入している労働者に限られますが、労働者の国籍については制限されていません。また、個人養老金は個人の希望により自発的に加入するもので、強制加入ではありません。
但し、日中社会保障協定が適用されることから、日本の国民年金·厚生年金にのみ加入し、中国の基本養老保険に加入していない日本人は、当該個人養老金には加入できない可能性があるという点に注意が必要です。
2.税制優遇享受の可否は具体的分析が必要
加入者は自身が新設した個人養老金口座に、毎年所定の限度額(上限12,000元)の範囲で個人養老金を納付することができます。税制優遇を受けることができるかどうかは、個人の収入や納税の具体的状況によって以下のように異なります。
(1)納付時:納付した個人養老金は年間限度額12000元の基準に従い、実際の納付額に応じて総合所得から控除することができる。
(2)運用時:個人養老金口座に入金された運用益には、当分の間、個人所得税は課税されない。
(3)受領時:個人養老金を受け取る際は、総合所得には組み込まず、個別に3%の個人所得税を納付する。
もし外国籍従業員で比較的収入が高く、年間個人課税所得額が3.6万元(個人所得税適用税率3%越え)を上回る場合は、個人養老金加入時に高い税制優遇を受けることができるという点は注目に値します。しかし収入がそれほど高くない外国籍従業員で、年間個人課税所得額が3.6万元を超えない、若しくは個人所得税が発生しない場合は、個人養老金に加入しても事実上当該税制優遇を受けることはできず、逆に税金支出の増加に繋がります。
◆外国籍従業員の留意点
中国の養老金制度と日本の年金制度には一定の違いがあることから、日本と中国で二重納付する場合や、両国間で年金待遇をどのように移転·継続するかなどの問題について前もって考慮しておく必要があります。
また、この個人養老金は随時受け取ることができるわけではなく、例えば基礎養老金受給年齢に達した場合や、外国に定住するために海外に渡航する場合、若しくは加入者が重大な疾病に羅患した(具体的基準は不確定)場合など、特定の受給条件を満たす場合にのみ口座内資金の受け取りを申請することができます。そのため、外国人従業員が個人養老金に加入する際は、資金流動に関わる制限についても事前に考慮する必要があります。
上記を踏まえ、各自が中国の個人養老金制度(例えば個人養老金の納付規則、税制優遇政策享受条件及び手続き、受給条件など)について正しく理解し、自身の状況(収入状況、中国に長期居住しているか否か)に基づき、コンプライアンスに沿った資金の使用や年金計画を立てることが非常に大切です。
作成日:2024年12月24日