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「ブラックリスト」リスクをどのように軽減するか -NEW-

   企業は、実務上様々な原因により、市場監督管理部門により重大な違法行為による信用喪失リスト、いわゆる「ブラックリスト」に載せられる可能性があります。「ブラックリスト」に掲載されると企業の経営活動が制限され、法定代表者や株主、董事などの高級管理職の名誉や業務、日常生活に悪影響を及ぼします。「ブラックリスト」リスクをどのように軽減するかは、各企業における重要な検討テーマのひとつです。そこで今回は、「ブラックリスト」リスク対応のポイントについて、各在中日系企業及び中国企業の皆様にご参考いただけるよう、簡単に解説いたします。

1.経営における瑕疵の種類
   企業の経営管理においては、さまざまな問題や「瑕疵」が発生します。例えば、税務申告の遅延、不正請求、企業年次報告の遅延、労務及び人事管理の瑕疵、製品品質の瑕疵、取引行為におけるコンプライアンス違反などが挙げられます。企業が「ブラックリスト」に掲載される可能性としては、主に以下のような状況があります。
(1)食品安全分野、医薬・化粧品分野、品質安全分野における特定の違法行為
   例:①合法な食品生産経営許可を取得せずに食品生産経営活動を行う。②人体に害を及ぼす可能性のある物質を含む化粧品などを生産、販売する。
(2)消費者の権益を侵害する特定の違法行為
   例:①消費者の尊厳や個人情報を侵害する。②費用を先払いさせたものの、履行義務を回避又は拒否するために経営場所を閉鎖・移転し、約定どおりに商品やサービスを提供せず、かつ市場監督管理部門からの連絡にも応じないなどの行為。
(3)公平な競争秩序と市場秩序を損なう違法行為
   例:商業秘密の侵害、虚偽取引、商業上の名誉毀損、知的財産権の侵害、価格の通謀や詐欺、マルチ商法などの違法行為。
(4)行政許可や市場主体登記に関して虚偽の資料の提出や事実の隠蔽を行う、市場監督管理部門の検査を妨害する、市場監督管理部門の行政決定を回避又は拒否するなどの行為
(5)経営異常リストに掲載されてから満3年経過しても依然として法的公示義務を履行していない

   但し、企業に上述の(1)から(4)の行為があったとしても、必ず「ブラックリスト」に掲載されるわけではなく、行為が悪質で情状が重く、また社会への危害が大きく、市場監督管理部門より厳重な行政罰(資質レベルの引下げ、営業許可証の取消し、生産経営活動の制限、生産・営業停止命令など)を受けた場合、「ブラックリスト」掲載されることになります。

2.「潜在的リスク」を取り除くことで経営リスクを軽減する
   企業が経営異常名簿や「ブラックリスト」に掲載された場合、企業、株主、董事、監事などの高級管理職はさまざまなリスクに直面することになります。
(1)政府部門による信用共同懲戒により、日常的な業務が制限を受ける
   ①経営、投融資、国有地の取得、輸出入、出入国、入札応札、政府調達、生産経営許可などの業務において、制限や禁止といった共同懲戒措置がとられる可能性がある。
   ②銀行口座の開設や融資などの業務に影響を及ぼす可能性がある。
(2)市場取引及び株主の信用や名誉への悪影響
   市場取引においても、取引先が経営異常リストや「ブラックリスト」に掲載された企業に対する審査を厳格化したり、提携を解除する可能性があり、企業及び株主の信用や名誉に重大な悪影響を与えます。
(3)企業の法定代表者、董事、監事、高級管理職の任職資格が制限される
   企業が「ブラックリスト」に掲載されると、その法定代表者(責任者)、董事、監事、高級管理職に関する情報が信用監督管理システムに登録され、任職資格などの事項が制限されるため、3年以内の期間中、事業主体の董事、監事、総経理、副総経理、財務責任者、上場企業の董事会秘書などの高級管理職への任職が制限されます。
   企業、株主、法定代表者、董事、監事、高級管理職へのリスクを軽減するためには、企業が経営過程における「瑕疵」や「潜在的リスク」を取り除くことが重要です。

◆リスクの排除に関する実務的対応ポイント
   上述の通り、「ブラックリスト」に掲載されると企業、株主、法定代表人などに悪影響を及ぼすことは明らかであり、これらのリスクをどのように軽減又は排除するかは、現地日系企業及び中国企業が検討すべき重要テーマのひとつです。以下に、実務経験に基づく対応ポイントを簡単に紹介しますので、在中企業及び中国企業の皆様にご参考いただければと思います。
   規則違反の重大性や状況が異なると、対応スキルも異なります。
(1)企業が政府当局から「ブラックリスト掲載」の通知を受けた場合は、中国の商習慣に基づき、適切な証拠資料を提出して違法行為が「主観的かつ故意ではない」ことを釈明し、企業が「ブラックリスト」に掲載されないよう政府当局と交渉を進めます。
(2)企業が既に「ブラックリスト」に掲載されている場合、弁護士に依頼し、企業に存在するリスク及び問題点を分析・調査し、原因を明らかにしたうえで政府当局と交渉を行い、政府当局側の態度や担当スタッフの政策への理解度を把握した上で、違法行為を改善し、可能な限り問題を簡潔に処理することで、政府当局による「ブラックリスト」から正常状態への回復を取り付けます。
(3)簡潔化した企業のリスクと「瑕疵」を取り除いた後、簡易抹消プロセスを実行します。企業が簡易抹消やその他方法による抹消を実現できなかった場合は、合法的な方法で企業を3年間又はそれ以上休眠させるか、持分譲渡などの方法による撤退も検討することができます。

作成日:2024年08月13日