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新『会社法』解説(5):董事の任期・辞任・解任について

   中国のコーポレートガバナンスを構成する上で重要な一部分である董事という役職は、その選任、交代、辞任などの面で会社の経営管理と意思決定にも深く関わっています。
   新『会社法』には董事の人数、選任、辞任、解任などに関連する規定が新たに加えられました。そこで今回は、各日系企業の皆様、及び董事、管理職に就く皆様にご参考いただくため、そのポイントについて解説します。

1.董事の任期回数は制限されない
   新『会社法』では、董事の任期は会社の定款によって定めるとしていますが、毎回の任期は3年を超えてはならない、つまり、取締役の任期は3年以下であればよいとされています。 (第70条第1項)
   また、董事の任期が満了した後に再度選任し再任することができるとしています。つまりこれは、新『会社法』施行後は董事の再任回数は制限されなくなるということを意味します。但し、会社の定款上で董事の再任回数を制限することが法的効力を持つかどうかなどについては、実務上、より踏み込んだ検討と分析が必要です。

2.会社は董事を任期中に解任できる
   実際、董事が任期満了前に何ら引き継ぎをすることのないまま退職したなどの理由により、董事会の人数が不足し会社の経営策の決定に影響を及ぼしたり、会社が董事を解任したくてもその方法が分からなかったりする場合があります。
   そのため新『会社法』では、董事が任期中に自ら辞任する具体的な方法や法的な責任を負う結果、及び会社が一方的に董事を解任する場合の規則に関する規定について、今回以下のように具体的に細分化しました。
(1)董事の自主的な辞任
   通常、任期中に董事が辞任する場合は、書面で会社に通知を行い、会社が通知を受けた日に辞任が有効になります。(第70条第3項)
   但し、董事の辞任により董事会の人数が3人未満になる場合、辞任した元董事は新たな董事が選任され就任するまでの間、董事の職務を履行する必要がある、という点に留意しなければなりません。
(2)会社側による董事の解任
   会社側が任期期間中の董事を解任するには、株主会(株主)が解任を決議すればよいとされていることから、会社は何ら理由がなくても董事を随時解任する権利を有していると言うことができます。また、こうした解任は決議された日から有効となるとしており、董事に送達後でないと有効にならないなどの規定はありません。(第71条)
   実務上、ある董事が法律、行政法規または会社の定款に違反しているものの、大株主の庇護を受けて株主会による解任決議ができないという場合、小株主が司法ルートを通じて当該董事を解任できるかどうかについては、さらに踏み込んだ検討、分析が必要であると言えます。
   但し、会社が董事を解任する正当な理由がない場合、董事が会社側に賠償を請求する権利を持っているという点に注意しなければならず、その際、会社側の賠償範囲は、実務上で一般的にその董事に与えた直接的損失と、引き続き董事を務めた場合に当該董事が得る利益を参考に計算することになります。

◆日系企業の皆様へのアドバイス
   『外商投資法』に関連し、組織形態、組織機構変更を調整するための5年間という移行期間が2024年12月31日には満了を迎えます。上記を踏まえ、日系企業各社は、当該分野に精通した現地弁護士との協議・分析を経て、会社董事の選任、辞任、解任方法と条件、及び董事会組織の構築、議事や採決の方式などについて、新『会社法』の条文と結び合わせつつ、企業の実情及び政府当局との交渉によって確認できた状況を基に調整を進めることができるでしょう。

作成日:2024年02月20日