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新『会社法』解説(4):法定代表者規則の重大な変化

   法定代表者は、存続経営する会社の代表であり、対外的な会社の顔という立場にあります。そのため法定代表者を選ぶことやその権利義務を設定することは、会社と株主にとって極めて重要なことと言えます。
   今回の新『会社法』改正では、法定代表者に関連する多くの規則に変化がありましたので、日本の本社及び現地日系企業、及び法定代表者の皆様にご参考いただくよう、以下に簡潔にご紹介いたします。

1. 法定代表者の選任範囲が拡大する
   今回の新『会社法』では、「会社を代表して会社の事務を執行する董事又は総経理」が法定代表者を担当できるとなっており、現行のように董事長、執行董事、総経理に限られていないため、実質的に法定代表者を選ぶ範囲が広がったということになります。(第10条第1項)
   このことから、新法が施行されると、名ばかりの法定代表者が務めているという状況に対して政府当局が監督・検査を強化する可能性があります。

2. 法定代表者の辞任規則が追加される
   現行の『会社法』では法定代表者の辞任に関する規定がなく、法定代表者がどうしても辞任できない、解任された旧法定代表者が変更登記手続きに協力しないという問題が度々起きていました。このため、新『会社法』には法定代表者の辞任規則が新たに追加されました。
(1)法定代理者は自主的に辞任できる
   新『会社法』では、法定代理者である人が董事または総経理を辞任した場合、同時に法定代理者を辞任したと見なされると規定しました。 (第10条第2項)
   この条文は法定代表者に辞任の権利を与えるものとなっていますが、条文中には辞任の手続きや必要な情報などについては明確にされていません。この点については、会社の定款や雇用契約書の中で約定しておくことが必要ですが、恐らく今後具体的な実施細則が発表されることにより明確になるでしょう。
(2)新法定代表者の直接の署名変更手続きが可能となり、旧法定代表者の署名は不要
   従来は解任された旧法定代表者が変更登記に協力しなければ、会社は長時間を要する訴訟などを通じ、政府当局に変更登記手続きを要求する必要がありました。
   新『会社法』第35条第3項では、会社が法定代表者を変更する場合、変更後の法定代表者が変更登記申請書に直接署名することができると規定され、登記手続きは旧法定代表者の署名なしに行うことができるようになりました。この一文により、旧法定代表者と連絡が取れない、旧法定代表者が変更手続きに協力しないというジレンマからの脱却が可能となります。

◆ 日系企業の皆様へのアドバイス
   取引先とのビジネス提携において、もし法定代表者の署名または捺印が必要な事項に関わっている場合、各日系企業は相手方の会社定款または株主会決議の内容から、取引先の法定代表者に当該事項を決定する権限があるかどうかをいち早く判断しなければなりません。これは、相手方が法定代表者には権限がないことを言い訳として義務の履行を拒否、責任逃れをするという事態を避けるためにどうしても必要です。
   法定代表者が会社名義で従事した行為の結果は、通常会社が負わなければなりません。そのため、各会社及び各株主にとって、法定代表者をどのように選出するか、またその権限をどのように設置するか、加えてその権限を対外的に公開する方法や、過失のある法定代表者への責任追及メカニズムなどは、今後日本の本社及び現地日系企業が重点的に検討・対応を迫られる新たな課題となることでしょう。

作成日:2024年02月01日