新『会社法』における日系企業に関連する実務上のポイント
12月29日、第14期全国人民代表大会常務委員会第7回会議において、新たに改訂された『会社法』が採択可決され、2024年7月1日より、正式に施行されることになりました。
今回の『会社法』改正内容は多岐にわたり、実質的な修正112条を含む228条が新設・改正されており、日本国本社および現地日系企業のコンプライアンスや経営管理面にも多大な影響を与えることになります。そこで今回は、実務上における日本国本社及び現地日系企業への影響が大きいポイントについて整理し、以下の通りご紹介いたします。
1.関連各社が留意すべき横型法人格否認制度の導入
新『会社法』では、横型法人格否認制度が新たに導入され、その中では、株主がその支配する2つまたはそれ以上の会社を利用し、会社法人の独立した地位と株主の有限責任を濫用して会社の債務逃れをした場合、各会社はその他いずれかの関連会社の債務に対する連帯責任を負わなければならない、としました。(23条第2項)
即ち、日本国本社が中国に設立した複数の関連会社間において、財務の混同や、業務の混同、並びに権力の過剰支配などが存在していた場合、いずれの会社も関連会社の債務に対する連帯責任を負う可能性がある、という点に留意が必要であることを意味しています。
2.株主の出資責任の強化
有限責任会社の株主については、出資払込引受制が実行されており、現行の法律では出資期間に制限を設けていなかったのに対し、新『会社法』では株主の出資期間に対し、最長でも5年までという制限が設定されました。つまり、株主は会社が設立された日から5年以内に出資金を全額払い込まなくてはならない、ということになります。(第47条)
また、株主が期限通りに出資金を払い込まず、会社の催告を経ても出資金を払い込まない場合、会社が株主に失権通知を出した後、株主は未払いの出資の持分を喪失することになります。(第52条)
3.董事は清算義務者となる
新『会社法』では、会社の清算義務者を「株主」から「董事」に変更しました。これは、董事が法定清算義務者になったということを意味しています。つまり、もし董事が清算義務を果たしておらず(例えば、会社がデッドロック状態にある時や、解散事由が発生した時、清算を組織せず、会議を招集・開催しない、または財産や帳簿を完全に保管していないなど)、会社や債権者に損失を与えた場合、賠償責任を負わなければならないということです。(第232条)
董事の清算義務は法定の義務であるため、会社定款や株主会決議によってその他の人を清算組のメンバーにしたとしても、董事の清算義務は免除されない、という点をしっかりと認識しておく必要があります。
◆日系企業の皆様へのアドバイス
新『会社法』は、現地日系企業のために、新たなガバナンスの形を提案していると言えます。新『会社法』施行に向け、現地日系企業の董事、監事、及び日本国本社経営陣は、弁護士と積極的に交流し、企業の発展に即したガバナンス・モデルを構築することが求められています。
コーポレート・ガバナンス、組織構造及び関連規則の調整は、すべて法定プロセスに則って行うことが重要であり、法的責任を負うことへのリスクを回避するためにも、現地弁護士のアドバイスを得ながら、董事会・株主会の開催や、会社定款・制度の変更などを適切に進めることができるでしょう。
作成日:2024年01月12日