外国籍駐在員の個人税優遇実施延長の継続について
納税者負担をより一層軽減するため、2023年8月18日、財政部、国家税務総局は、『外国籍個人の手当・補助にかかる個人所得税政策の実施延長継続に関する公告』(財政部 税務総局公告2023年第29号)以下『29号公告』と略)を発表しました。この『29号公告』では、外国籍個人の個人所得税特別項目付加控除(以下「個人税特別控除」と略)と、住宅補助、言語トレーニング費、子女教育費などを含む8項目の手当・補助優遇政策を引き続き延長して実施することが決定されました。今回は各日系企業の皆様及び外国籍駐在員個人の皆様がご参考いただける『29号公告』のポイントについて解説いたします。
1.「個人税特別控除」と8項目の手当・補助優遇政策は「二者択一」する
『29号公告』によると、居住者個人としての条件を満たす外国籍個人は、「個人税特別控除」を受けるか、住宅補助、言語トレーニング費、子女教育費など8項目の手当・補助優遇を受けるか、2種類の措置のうち、いずれか1つを選択できるとされています。(第1条)
居住者個人としての条件を満たすとは、中国国内に住所があるか、または住所は無いものの、一納税年度内に中国国内に累計183日以上居住している個人(国籍を問わない)を指します。この政策は2027年12月31日まで継続的に延長実施されますが、外国籍駐在員及び各企業は、政策が終了した後も、引き続きその変化動向に注目する必要があります。(第2条)
「個人税特別控除」と8項目の手当・補助優遇を同時に享受することはできないため、どちらか一つを選択することになりますが、一度選択した手当・補助については、同一の年度内は変更・調整することができないとされている点にも留意が必要です。
2.「個人税特別控除」と8項目の手当・補助優遇の享受対象
『個人所得税特別項目付加控除暫定弁法』によると、「個人税特別控除」の享受対象は居住者である個人のみであり、外国籍非居住者個人である場合は享受することができません。つまり、中国に住所がなく、一納税年度内の中国国内滞在日数が累計183日未満の個人は、「個人税特別控除」を受けることができない、ということになります。
なお、8項目の手当・補助優遇の享受対象は外国籍個人とされており、居住者個人であるか非居住者個人を問わず享受することができます。
◆日系企業及び外国籍駐在員の皆様へのアドバイス
「個人税特別控除」と8項目の手当・補助優遇政策を享受するためには、税務機関の監査を受けることになっており、関連する証憑、書類などを提出する必要があります。また、各資料別に保存要件が異なっており、例えば、「個人税特別控除」に関する資料は、税務機関の審査に備えて5年間保存する必要があるとされています。
通常、外国籍個人が受ける8項目の手当・補助優遇の享受も税務機関の審査対象となりますが、この手当・補助優遇政策の適用面や遵守事項を十分把握できていないことが多々あり、その結果、企業及び駐在員個人が税務調整を要求されることも見受けられます。 そのため、事前に現地弁護士、税理士などのスペシャリストとコミュニケーションを取ることは必要不可欠であり、弊所も専門的な分析や、アドバイス、解決策の提供によるサポートが可能です。
作成日:2023年09月14日