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明確になってきた個人情報国外提供の規制内容

   2021年8月に『個人情報保護法』が公布された後、その中に規定されている「個人情報の国外提供」が注目されてきました。
   日系企業が中国法人で従業員を雇用した場合、日本本社に個人情報を提供することが一般的ですが、違法に「個人情報の国外提供」を行った場合、その法的責任は重く、5000万元以下もしくは前年売上高の5%以下の罰金が科されます。
   『個人情報保護法』の公布から約1年が経過し、中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が『個人情報の国外提供に関する標準契約規定』(以下、『標準契約規定』という)の草案を公布し、日系企業にとって「適法な個人情報の国外提供の方法とは?」という問いに一定の回答が得られました。
   今回は、その『標準契約規定』について、注意すべき要点を解説します。

◇『標準契約規定』の正式公布までの日系企業の動き
   『個人情報保護法』が2021年11月1日に施行されて以降、CACは標準契約について雛形や管理規則について公開してきませんでした。
   そのため日系企業は、取得した個人情報を中国国外に提供したい場合、同法の理解を汲み取った『個人情報の国外提供に関する予備契約』の作成を弁護士に依頼し、中国法人と日本本社でそれを締結するなどしてCACからの指摘を回避する手段を取るなどして実務的な対応をしていました。

◇標準契約規定及び雛形の草案で、日系企業が注目すべき内容
   CACが制定した標準契約の雛形のボリュームは多く、法的な観点から押さえておくべきポイントは以下の通りです。
①標準契約が有効となった日から10営業日以内に所在地のCACに届け出る
②標準契約の内容が変更された場合、または海外の情報受取側が所在する国または地域の個人情報保護政策および規制が変更された場合、日本企業は、受取側との標準契約の再締結し、届出を行わなければならない
③標準契約を締結している場合でも、日系企業は個人情報を海外に提供する前に自己評価を行う必要がある

◇日系企業へのアドバイス
   日系企業は標準契約が効力を発生した後でも安心することなく、日本など中国国外に個人情報を提供する前に締結した標準契約をCACに届け出るなど、法的義務を履行する必要があります。それを怠った場合、CACから調査と処罰を受ける可能性があります。
   また、標準契約の規定や雛形の草案の内容を見ると、標準契約の内容は比較的複雑であり、CACへの提出手続も煩雑です。日系企業の皆様は事前に弁護士に連絡して、適切な対応ができるよう準備をする必要があるでしょう。

作成日:2022年09月02日