新「管理条例」と「休眠」の条件
現在、中国においても日本の「休眠」に類似した休業制度がすでに実施されています。これは、今年3月1日から正式に施行されている『市場主体登記管理条例』(以下『条例』という)で新たに設けられたもので、コロナ禍の深刻な影響を受けて経営困難に陥ったものの、経営の継続を望む企業に猶予期間を与え、企業の維持コストを引き下げることが目的です。コロナ禍という特殊な状況を理由に、日本本社の幹部や、一時帰国した高級管理職が現地入りすることが難しい期間が続いているため、休業することも対応策の一つとなります。『条例』と併せて『市場主体登記管理条例実施細則』(以下『実施細則』という)も同日公布され、休業制度の具体的な内容がさらに明確に規定されました。以下では休業制度について簡単にご紹介いたします。
1.休業の適用対象
自然災害、事故災害、新型コロナウイルス感染症等、公共衛生や社会安全事件に起因して生産経営が困難となった企業のみが「休業」を申請できると規定されています。(『条例』第30条第1項、『実施細則』第40条)
2.休業の前提・制限条件:労務問題の解決
国が設ける休業申請の制限条件として、企業は休業する前に労務問題を解決しなければならないとされています。ここでいう労務問題とは、労働契約の終了又は解除に関する従業員との協議や、賃金支給、社会保険料納付の問題等となります。(『条例』第30条第2項)
3.休業中の年度報告と休業期間公表
休業にあたっては市場登記機関に届出手続きを行う必要があり、休業期間中にも政府機関との協議・交渉をする必要があります。
規定により、休業期間において、企業は年度報告を行い、国家企業信用情報公示システムを通じて休業期間や法的文書の送達先住所等の情報を社会に公表しなければなりません。(『実施細則』第41条)
年度報告のほか、納税申告の必要があるかについては現地税務機関に確認を取る必要があり、現地政府機関の動向には随時注目するとよいでしょう。
◆ 日系企業へのアドバイス
休業は会社の経営、労務、税務等のあらゆる面に関わる問題であり、綿密に計画して実行しなければ、企業に一定の不便や不利益な影響が及ぶ可能性もあります。休業を選択するにあたっては、弁護士に相談したうえで株主とも具体案を協議し、休業前、休業中を通じて政府機関との協議・交渉を維持することが大切です。問題の指摘を受けることがあれば、積極的に対応することで後の経営再開の見通しを確保でき、将来的に経営を終了するとしても、簡易抹消の適用等、閉鎖手続きに必要な条件を具備するのに役立ちます。
作成日:2022年04月21日