重点法規解説

新人民調停法の内容の解釈について

2010年8月28日、第11回全国人民代表大会常務委員会第16回会議において『中華人民共和国人民調停法』(以下『人民調停法』という。)が審議を経て可決された。2011年1月1日より実施される。
所謂人民調停とは、法律に基づいて人民調停委員会を設立し、説得及び、緩和などの方法を用いて、紛争当事者が平等協議の下、自発的に協議の調停合意に達することを促し、民間紛争を解決する大衆的な自治活動の一種であり、中国の特色を持ち、矛盾を解決し、紛争を除去の非訴訟による紛争解決方法の一つである。
今回の人民調停法の公布において、特に以下の内容が注目に値する。
1.当事者の権利について
人民調停法では、以下の通り規定されている。
①当事者は、人民調停員の選択又は受け入れる権利を有する。
②当事者は、調停の受け入れ又は拒否を選択する権利を有し、なお且つ調停を中止する権利も有する。
③当事者は、調停を公開で行うか否かを求める権利を有する。
これらの規定を完備することにより、当事者の権利を尊重するため、調停を理由として、当事者が法による仲裁、行政、司法等のルートを通じて自ら権利を維持・保護することを阻止してはいけないという、民間紛争を調停する際の人民調停の原則を十分に示すことが出来る。
同時に、人民調停法は、民間紛争の調停に関し、如何なる費用も徴収してはならず、調停員は一方の当事者のみの肩を持ったり、当事者を侮辱したりしてはならないと明確に規定している。また、他人から財物を取り立てたり、受け取ったり、その他の不当な利益を得てはならず、当事者の個人情報や商業上の秘密等を漏らしてはいけないとも明確に規定している。
2.人民調停協議の効力について
人民調停法では、人民調停委員会を通じて調停協議に合意した場合、法的拘束力を持つため、当事者は約定に従って履行しなければならないと規定している。これと同時に、人民調停法は、立法を通じ、人民調停協議の司法確認制度を確立した初めての法律である。即ち、人民調停委員会の調停により調停協議に合意した後、双方の当事者は必要と認める場合、協議が発効した日より30日以内に、双方共同で人民法院へ司法確認の申請をすることができ、人民法院が調停協議の有効性を確認した場合、一方の当事者が履行を拒否したり、一部しか履行しない場合、相手の当事者は、人民法院に強制執行の申し立てをすることができる。
3.人民調停と司法調停及び行政調停の関係について
現在、人民調停以外に司法調停、行政調停がある。実務上では、人民調停を優先する原則を貫き、社会的矛盾解決の基礎的作用を十分に発揮させ、人民調停とその他の紛争解決方法の間の接続関係を上手に調整するため、法律の規定により、下部裁判所及び公安機関が人民調停の方法により紛争を解決することが適当と思われる案件に対しては、受理前に当事者に、人民調停委員会へ申し立て、調停を行うと告知することができる。

作成日:2010年09月09日