企業労務管理:年末を控え、労働組合経費を使って従業員の業務に対する積極性を引き出すには
Q:当社は労働組合を設置している日系企業ですが、十数年前に設立して以来、規定通りに労働組合経費を積み立ててきたので、今ではかなりの額の積立てがあります。年末も近づいていることで、この経費を使って従業員の帰属意識や業務への積極性を高めたいと考えていますが、何かよい方法はないでしょうか。
A:これはすばらしい考えで、現実的にも実行可能なことであり、特に新型コロナウイルスの影響で多くの企業が業績不振となった今年においては、過年度のように十分な予算を使って従業員への賃金増額又は福利支給を行うことができていない中、これまでにためた労働組合経費の残高を十分に活用して従業員に必要な福利を与えることで、従業員の積極性を大いに引き出し、良好なプラスの効果をもたらすことが期待できます。
1.労働組合経費の使用可能な項目
(1)通常の用途
労働組合経費は主に弁護士、メンタルケアの専門家、業界の専門家等の外部人員を招いて従業員に法律や業務等各種のテーマでの研修・セミナーを開き、従業員の業務能力や知識を高めるのに用いるほか、合理化、発明想像、技術コンペ、技術訓練等の活動を主催し、優秀な成績を収めた個人やチームに与える奨励としたり、法定祝休日或いは従業員の誕生日、結婚、出産、病気等の場合に祝儀や見舞の金品を渡すのに用いられます。
(2)コロナ対策期間における特殊用途
上記の用途のほかにも、最近新型コロナウイルスワクチンの上市情報が相次ぎ、経済の復興に大きな朗報となっています。労働組合で従業員のためにワクチンや新型コロナウイルスに関する保険を購入すれば、従業員の感染リスクを抑えるとともに、少数の感染者が出たことによる生産中止も最大限防止することができます。当然、ワクチン接種においては個人の意思を尊重する必要がありますが、防疫関連の管理規定によると、特殊な職務に従事する人員(現場で治療に当たる医療関係者、コールドチェーン業者、国外出張者等)には原則として接種を義務付けるとしており、接種しない場合関連の職務に従事できなくなるおそれがあります(職務調整、自宅待機、労働契約解除等の問題となる可能性)。
2.留意点
弊所での案件対応経験から、企業では労働組合経費の支出には労働組合経費審査委員会による審査を受けて同意を取得し、労働組合委員会での協議決定を経てから実施するよう留意し、必要に応じ、また紛争となった場合には、弁護士に相談ください。また、労働組合からも、弁護士に依頼して経費支出制度を整備することにより、法律法規への違反や基準を超過した支出項目の出現を回避することができます。必要な場合は、毎年前年度の経費収支についての特別監査を監査機関に委託し、結果に基づき不備を補正することも可能です。
作成日:2020年12月18日