法律相談Q&A

アフターサービスを外部委託することは可能か

Q: 感染対策期間において、当社では外部地域向けに販売している製品のアフターサービス・補修サービスを適時に提供することができなくなっています。アフターサービスを現地の第三者に委託して実施することは可能でしょうか。可能な場合、当社より委託するにあたっては、どのようなことに留意すべきでしょうか。

A: 新型コロナウイルスの感染爆発以来、企業ではさまざまな原因により、現地に従業員が赴いてアフターサービスを提供することができなくなったり、従業員によっては感染を恐れて外部地域への出張を控えたがる者もいます。それでも顧客から緊急にアフターサービスの提供が要望されている場合、速やかに提供できなければ企業の評判に影響を及ぼし、影響が深刻になると、以後の注文が取り消されたり、損失の賠償を求められることもありえます。そうした日系企業を大いに悩ませる事態に対し、以下のような対応措置の採用を検討することが可能です。

1.現地の資格を持つ企業にアフターサービスの代行を委託する
   新型コロナウイルスの感染流行による影響から、企業が外部地域に赴いてアフターサービスを提供することができないという状況において、どうしても企業自身で遂行しなければならないアフターサービスを除き、『民法総則』第161条の規定により、企業は現地の資格を持つ第三者にアフターサービスの実施を委託することができます。実務において、コスト等のさまざまな面を考慮して現地の第三者にアフターサービスを委託している企業はすでに多数あります。企業でアフターサービスの第三者委託の可否を判断しかねるという場合には、弁護士に相談すれば、契約内容やアフターサービスの内容、関連法律規定等に基づき、アフターサービスを企業が自ら遂行すべきかどうかを弁護士が分析し、必ずしも自社で遂行しなければならないサービスではないと判断されれば、第三者に実施を委託することが可能となります。

2.第三者にアフターサービスを委託する場合の注意点
   企業は顧客に対してアフターサービス提供の義務を負っているため、第三者は企業の委託を受けて顧客にアフターサービスを提供することになり、企業は第三者の提供するアフターサービスの成果について顧客に対して責任を負う必要があります。第三者がアフターサービスを実施しなかったり、実施したサービスの品質が基準に適合しないといった場合には、企業が顧客に対して法的責任を負うこととなります。第三者に効率的かつ高品質なアフターサービスを提供してもらうために、企業では以下の事項に注意する必要があります。
   ① アフターサービスの提供を委託する第三者は、資格を持つ業者とする。
   ② 第三者への委託を確定する前に、第三者の信用状況について調査を行う必要がある。第三者の訴訟や被執行状況等について弁護士に調査を依頼し、第三者の信用状況や、アフターサービスの提供能力の有無等をある程度把握しておく。
   ③ 正式に第三者へのアフターサービス委託を行う前に、弁護士により関連協議書を作成し、アフターサービスの内容、期間、検収基準、費用等の内容について明確にしておき、関連事項についての約定が不明確であることが原因で紛争が発生するのを回避する。
   ④ 第三者によるアフターサービスの実施過程において、企業はその実施の全過程を監督し、問題を発見次第直ちに是正させる。
   ⑤ 第三者によるアフターサービス実施が完了したら、第三者が提供したアフターサービス及びその際の態度についての評価を顧客に求めることができる。また、企業が法律事務所に依頼しアフターサービスホットラインを開設し、法律事務所が当事者外の中立的な立場から顧客のアフターサービスに対する評価を収集したうえで客観的、中立的な分析を企業に提供し、これを委託費用支払いの根拠とすることもできる。

◇日系企業の留意点◇
   新型コロナウイルスの感染対策が新たな常態となりつつある中、日系企業ではこれを契機として、外部地域向けに販売する製品のアフターサービスについて、資格を持ち、サービス精神があり、信用状態の良好な現地の第三者に委託して実施することを検討いただけます。このような方法を取ることで、一定程度の人件費や出張コスト等を抑えることができる一方、迅速かつ有効に顧客へのアフターサービスを提供することができるようにもなります。また、このようなサービス体系の適法性、コンプライアンス、有効性を保障するために、企業から第三者にアフターサービス提供を委託するサービス体系の制定を弁護士に委託し、第三者によるアフターサービス提供への管理を強化することも可能です。

作成日:2020年08月27日