最新法律動向

アフターコロナ、労働契約の延長は?

   世界的な感染大流行の影響を受け、各地政府では強力な感染対策の措置を取り、人の移動や物流を制限したり、隔離措置が取られたことにより、サプライチェーンが分断され、業務注文が減少し、人手が余る企業も出てきております。今回は、感染流行期間中、感染収束後における従業員との労働契約更新/終了について、解説いたします。

◇労働契約期間の満了する従業員との契約を終了する企業も
   新型コロナウイルス感染流行の影響を受け、労働契約の期間満了を控えた従業員に対し、企業では平時に比べて労働契約の終了が選択されやすくなっています。企業が労働契約を終了する理由としては、以下のようなものが考えられます。
1.企業の正常な生産経営ができなくなり、収入が減少しているにもかかわらず従業員賃金や社会保険料の支出がなお発生することにより、会社の資金が不足しているため、支出を減少する必要がある。
2.世界的な感染大流行の影響を受け、サプライチェーン、産業チェーンが分断され、注文が減少し、人手が余っている。

◇労働契約を終了するか更新しない企業へのアドバイスと留意点
   労働契約期間がまもなく満了する従業員との契約を更新するかどうかは、従業員との労働契約締結状況、従業員自身の状況及び企業の実際の必要を考慮したうえで、総合的に決定する必要があります。実際の対応方法及び留意点は以下の通りとなります。

1.30日前までに、更新しないことを従業員に通知する
   会社より30日前までに、不更新又は終了の意向について書面で対象従業員に通知し、従業員の反応を見ます。
   感染対策期間においては、人力資源社会保障部の『新型コロナウイルスによる肺炎の感染流行対策期間における労使関係問題の適切な処理に関する通知』の規定により、隔離治療や医学観察の期間中の新型コロナウイルスに感染した患者、疑い例患者、濃厚接触者や、政府が実施する隔離措置やその他実施された緊急措置により、正常に労働を提供できなくった従業員について、この期間中に労働契約期間が満了する場合、会社が無断で労働契約を終了した場合は違法となり、違法行為に相応の経済賠償金等を負担する結果となります。

2.従業員の反応別の対応措置分析
(1)従業員が契約の更新を要求した場合
   a. 従業員との労働契約締結の状況を分析し、会社が更新を拒否できるか検討する
例えば、従業員がすでに会社に10年間勤務しているか、会社と固定期間労働契約を連続して2回締結している場合(上海市を除く)、従業員より更新を要求された場合は、会社として労働契約を更新せざるを得ない。
   b. 会社に拒否する権利がない場合
   数ヶ月分の賃金に相当する経済補償金を追加的に支払い、協議して契約を終了する。
 会社に拒否する権利がないにもかかわらず更新したくない場合は、追加的に数ヶ月分の賃金に相当する経済補償金を支払い、協議して契約を終了します。
   協議で合意できない場合は、ただちに書面の労働契約を締結する。
   従業員との協議で合意できない場合は、ただちに書面の労働契約を締結することで、1ヶ月以内に書面の契約を締結していないことにより、従業員から2倍の賃金の支払いを要求されることを防止します。対面形式で締結することができない場合、まず会社から労働契約書を電子データで従業員に送付し、従業員に印刷し署名したものを会社に返送させ、後に書面での締結を補完することも可能です。
(2)労働者からの更新要求がない場合
   従業員より労働契約の更新要求がないようであれば、従業員に手書きで契約を更新しない旨の声明又は退職願いを作成してその写真データを会社に提出させたうえ、原本はEMSで会社に送付させることをお勧めいたします。会社が労働契約期間の満了を理由に従業員との労働関係を終了する場合には、法により経済補償金の支払いが必要とされることにご注意ください。

3.むやみに終了や不更新を選択せず、事前に専門家に相談を
   従業員との労働契約期間が満了する前に、弁護士に相談して対応方法を分析することをお勧めいたします。むやみに終了すれば、違法な労働契約の終了を構成し、従業員により高額な経済賠償金を支払うことになり、会社の名誉や信用も損なわれる結果となります。

◇感染流行期間中、感染収束後における日系企業へのアドバイス
1.なるべく従業員と協議してともに困難を乗り越え、従業員との労働契約を終了せず、社会への貢献をはかる。

   全世界的な感染流行の中で、国務院及び各地の政府機関では、就業を安定させ、企業と従業員の労働関係をなるべく維持し、労使間の矛盾を解消するよう呼びかけています。このような時期に、企業では従業員と賃金支給、業務指示等について協議することにより、従業員との労働契約の終了、解除をなるべく回避することができます。企業が従業員と相互に理解し合い、ともに困難を乗り越えることが求められています。
企業では、ベテラン従業員や育成する必要のある新人との契約の終了や解除はなるべく避けるようにし、契約の終了がどうしても必要な従業員については協議を行って適法かつ合理的に契約を終了するようにします。

2.会社の高級管理職、人事担当者又は一般従業員向けのコンプライアンス研修を行い、社内管理を整える。
   労働契約の更新及び終了は、従業員管理の重要な部分をなすとともに、社内管理には不可欠な要素です。会社、従業員、状況ごとに適用する計画も異なるため、企業では弁護士に依頼し、定期的に高級管理職、人事担当者、一般従業員向けに労働関連の研修を年に1、2回の頻度で実施することで、コンプライアンスの遵守をはかり、不要な損失を減らすことをお勧めいたします。
   どのような従業員に対して労働契約を終了し、更新しないことが可能か、いつをもって終了するかについては、さらなる分析が必要となります。従業員との協議の方法やテクニックも重要となるため、ぜひ弊所にご相談いただき、ともに分析させていただければと存じます。

作成日:2020年08月27日