最近公布された『民法典』の日系企業との関連性
今年5月28日、第13期全国人民代表大会第3回会議にて『中華人民共和国民法典』が可決され、2021年1月1日より施行されることになりました。『民法典』は順に、総則編、物権編、契約編、人格編、婚姻・家庭編、相続編、権利侵害責任編の全7編に附則を合わせた全1,260条からなります。以下、外資系企業では『民法典』のうちどのような内容に特に注目いただくべきか、ご紹介いたします。
(1)総則編:第三章 法人
外資系企業の中国における主な組織形態が、企業法人です。総則編の第三章は法人という重要な民事主体について規定したものとなっています。この章では法人の類型、成立、組織機構、管理規則及び解散・清算・撤退に関する一般規定を設けています。
(2)物権編:第十二章 建設用地の使用権、第四分編 担保物権
外資系企業が中国において取得した全ての不動産、動産の帰属及び利用については、物権編による保護や調整を受けることになります。このうち、外資系企業が中国で投資し取得した工場の建設用地の使用権に含まれる権利の範囲と制限や、取引活動の中で担保物権の利用についての設定方法により資金を調達したり、取引に保障を得るといった問題は、全て物権編に答えを見出すことができます。
(3)契約編:第一分編 通則、第二分編 代表的契約のうち第九章 売買契約、第二十章 技術契約、第十三章 保証契約、第十六章 ファクタリング契約
外資系企業では日々のビジネス活動において常に契約を扱っています。契約編の第一分編では、契約の締結から、効力、履行、終了等に至るまで網羅的に一般性規定を設けており、これらの規則はあらゆる類型の契約に適用されます。このほか、契約編の第二分編では19種の類型にわたり代表的な契約について規定しています。うち、第九章 売買契約はどの企業でも活用できる内容で、「契約法小総則」と称されています。第二十章 技術契約は、外国の親会社の技術を使用して中国で生産経営や取引を行う外資系企業にとり特に重要な内容となっています。また、新たに追加された第十三章 保証契約、第十六章 ファクタリング契約は全体が新たな規定となっており、今後の取引に影響があるものと思われます。
(4)権利侵害責任編:第四章 製品責任、第七章 環境汚染・生態破壊責任
権利侵害責任編は7編目に配置されているものの、権利侵害責任編の重要性が低いというわけではありません。外資系企業と他人の間に契約関係があるか否かにかかわらず、外資系企業の民事権益に他人による侵害を受けた場合や、外資系企業が他人の民事権益を侵害した場合のいずれにも、権利侵害責任編の中に権威ある法的根拠を見出すことができます。
また、製造業に従事する外資系企業にとり、第四章 製品責任及び第七章 環境汚染・生態破壊責任の特殊な権利侵害行為2種に関する規則は、重点的に注目すべき内容となっています。
外資系企業との関連性が比較的高い上記の4編のほか、人格権編、婚姻編、相続編の3編は、外国人個人との関連が密接な内容となります。例えば、人格権編のうち肖像権、プライバシー権及び個人情報の保護に関する規定は、外国人駐在者の日常生活に関わるものとなります。婚姻編や相続編の内容は、中国で結婚し、子供を設ける外国人及びその親族の人身、財産の権利に関わります。
◇日系企業へのアドバイス
『民法典』は、中国国内で民事活動に従事する外資系企業や外国籍の自然人を含む、全ての民事主体の各種の民事権利の保護に関係し、日系企業及びその関係者には十分に注目し内容を把握されたうえ、関連分野において必要な調整や対応を取ることを検討いただく価値のあるものとなっています。今回は取り急ぎ『民法典』のうち外資系企業と関連性のより高い内容について簡単に提示いたしました。各編中の具体的な注目点やアドバイスについても、今後、編ごとに解説し、皆様と共有させていただく予定です。皆様からも関心や疑問を持つ点があれば、ぜひ弊所にお問い合わせいただければと存じます。
作成日:2020年08月27日