法律相談Q&A

契約締結時、相手方当事者の主体資格をどう審査するか

Q.当社は、日系の貿易会社です。現在、取引は基本的にオンラインで行っています。契約締結上のリスクを低減するためには、どのようなルートで契約相手の主体資格、ライセンス、履行能力を確かめればよいでしょうか。

A.商品のグローバル化やインターネット経済の発展に伴い、ますます多くの貿易会社がオンラインでの取引を行うようになっていますが、電子契約の締結において、契約相手の資格や契約履行能力を確認することができず、知らないうちに契約履行リスクが増大しているということがあります。このため、企業では電子契約を締結する前に、相手の主体資格、契約履行能力、信用状況等を慎重に審査し、契約履行リスクを極力抑える必要があります。契約主体の資格を審査する方法として、以下が挙げられます。

1.契約相手の契約締結資格についての審査
(1)相手に、契約を締結する主体資格があるかどうかを審査します。例えば企業の一部署や事業部等は主体資格を持っていないため、外部との契約締結はできません。これらを相手に締結した場合、主体として不適格なために無効と認定されてしまう可能性があります。
(2)制限を受けている特定の業種に従事している企業に対しては、相手がその生産経営を行うための資格証書を取得しているかどうかを審査する必要があります。取得していない場合、契約の効力に影響が出る場合があります。例えば、医薬品を扱う企業では国家薬品生産・経営許可証、広告企業では広告経営許可証が当該企業が取得しているべき資格証書となります。
(3)契約を締結する代表者の授権文書(授権された権限及び有効期限)ならびに身分証明書を審査し、表見代理、越権代理や授権失効等の状況となり、契約が無効となったり、効力未定とされる等の紛争発生を避けるようにします。

2.契約相手の契約履行能力の審査
(1)「国家企業信用情報公示システム」(http://www.gsxt.gov.cn/index.html)か、「天眼査」、「企査査」等の第三者が提供するツールを利用して、取引相手の工商登記情報を審査することができます。これらのシステムにより提供される企業の年度報告書、行政処分、経営異常等の情報を通じて、企業の契約履行能力を間接的に把握することができます。
(2)「裁判文書網」、「信用中国」、「中国執行信息網」等を通じ、相手が多数の法律訴訟案件を抱えていないか、信用失墜ブラックリストに載せられていないか等を調べることができ、更に企業の信用状況を把握することができます。
(3)相手企業のウェブサイトを検索する。公式ウェブサイトから、相手の基本情報(企業の組織構造、経営状態、連絡先情報等)を知ることができ、その他のメディア(インターネット、新聞、広告等)や、同業者からの情報収集の結果を踏まえ、総合的に判断することができます。

上記の方法で調べ、インターネット上に相手方の好ましくない情報が多く見つかったり、法律訴訟において被告となっているケースが多い、政府機関からの処分を頻繁に受けている、工商登記情報に異常がある、信用失墜被執行人に挙げられているといったことがわかれば、その経営状況に不適切な点があり、経営困難や信用不振等の問題を抱えていることが間接的に表れたものである可能性があります。

このように、企業が契約を締結する前に、相手の主体資格について必要な審査を行うことで、有効に契約履行リスクを抑えることができます。その金額が高額で、ハイリスクな取引となる際には、企業が弁護士等の専門家に相談し、必要に応じて相手の資格、経営状態について調査することで、契約履行リスクを低減されることをお勧めいたします。

作成日:2019年04月19日