新『不正競争防止法』の商業賄賂規定に関する改定内容と留意点
Q.青島にある日系企業です。最近『不正競争防止法』が改定されたと聞きました。新法での商業賄賂に関する規定の主な内容と注意すべき点を教えて下さい。
A.現行の『不正競争防止法』は、1993年の施行開始以来、すでに20年が経過しています。この間の中国経済の発展に伴い、新しいビジネスモデルが出現し、業界状況が絶え間なく変動したこと等によって、現行の法律では、時代の趨勢に適応できない部分が出てきました。このため改定が行われることになり、新たな『不正競争防止法』が、2017年11月4日に公布され、2018年1月1日から施行されます。主な改定のポイントは、次の通りです。
1.商業賄賂の対象とされる範囲を拡大
旧『不正競争防止法』では、商業賄賂を贈るべきでないとする対象を「相手方の会社又は個人」としていましたが、新法ではその範囲を次の通り拡大しました。
①取引相手の従業員
②取引相手からの委託を受けて関連事務を行う会社又は個人
③職権又は影響力を利用し取引に影響を及ぼす会社又は個人
2.会社は、会社と関係のない従業員の個人的な賄賂行為に対して責任を負う必要はない
新法では、当該賄賂行為が従業員本人による行為であり、経営者のための商機又は競争の優位性獲得とは関連していないことを、会社が証拠を示して証明できる場合、経営者の責任を免除することを明確に規定しました。
3.違法行為に対する取り締まりの強化
①経営場所への検査、差し押さえ、押収、銀行口座の照会等の調査措置を追加し、取り締まりを強化する。
②商業賄賂に対する制裁金の上限を大幅に引き上げて20万元から300万元とする。
③協力を拒んだり、調査の受け入れを拒否する当事者に対しては、治安管理処分を科す可能性がある。
④違法と処分は信用記録に記載し、公示する。
留意点
1.上記の商業賄賂規定を含め、新法は、不正競争行為の範囲を拡大し、それに対する監督管理と処分を顕著に強化しました。企業では、法に基づいて正しく生産経営活動を行い、新法で改定された内容を踏まえ、コンプライアンス管理のシステム、規定を確立し整備されるようお勧めいたします。会社内部のコンプライアンス調査を定期的に行い、会社に存在しうる違法リスクを全面検査します。問題を発見した場合、ただちに所管政府機関に確認し、弁護士に相談して会社のリスクを可能な限り軽減します。また、新法の施行が徹底されるまでには一定の過渡期が必要となり、地域や担当者によっても法律に対する理解が異なる可能性があります。会社で上記の措置をとるとともに、所管政府機関の新法に基づく実務執行や関連する動きには引き続きご留意ください。
2.日系企業の生産経営活動は、全般的にコンプライアンスに適っているように見受けられますが、従業員が個人の業績獲得のために、不正競争行為に手を染める可能性がないとはいえません。日系企業の皆様におかれましては、コンプライアンスを守る会社を保護する新法の規定を利用し、会社で実際に行っている取引モデルや取引行為に鑑みて、従業員個人による不正競争行為がもたらす悪影響とリスクから会社を守るべく、適切な措置を講じることがお勧めされます。
作成日:2017年11月20日