最新法律動向

『汚染地土壌環境管理弁法』について

◇2016年12月31日、環境保護部は『汚染地土壌環境管理弁法』(以下『弁法』という。)を公布し、2017年7月1日から施行されます。今回は、『弁法』に関連する内容及びその留意していただきたい点について皆様へ簡単に、ご説明いたします。

◇この法律が立法された理由
中国の土壤環境の汚染は著しく、全体的に楽観視できない状態にあります。ここ数年、政府は環境保護を進めてきており、2015年1月1日に新たな『環境保護法』を施行したことに引き続いて、土壤環境の保護と汚染防止管理を強化するため、この『弁法』を公布しました。

◇『弁法』の主な内容
1.適用される範囲:本弁法は、主に次の範囲で汚染の疑いがある土地に適用されます。
①土地使用権の回収を予定しているか、既に土地使用権を回収したか、用途を居住地、商業用地、公共施設用地に変更することを予定している場合。
②非鉄金属の精錬、石油加工、化学工業、石炭の高温乾留、電気メッキ、皮革製造等の業界で生産経営活動に従事していた用地。
③危険な廃棄物の貯蔵、利用、処理活動に従事していた用地。
2.主な内容
①「汚染した者が、処理を行う」
土壤汚染の処理責任の主体を明確化し、土壤汚染を齎した企業又は個人が汚染地に対して土壤環境についての詳しい調査、リスク評価、リスクコントロールを行い、なお且つ処理と修復の責任を負うことと規定しました。
②汚染処理と修復の終身責任制
『弁法』では、当該制度について更なる具体的な規定は設けていません。具体的な執行措置については、今後政府機関から関連する法令が公布されるのが待たれます。弊所では、「終身責任制」が施行されて以降は、土壤を汚染した企業又は個人が土地使用権を譲渡してからも、処理及び修復の責任を追及される可能性があるものと理解しています。
③「修復してから、開発する」
汚染地が処理及び修復されていないか、処理並びに修復が基準を達成していない場合、所管の環境保護機関は、これに対する環境アセスメント報告書を認可しません。関連する規定によれば、企業が環境保護機関から環境アセスメント報告書の認可を得られなければ、建設を開始してはならないとされています。

◇ご留意いただきたい点
1.企業が現在使用している土地が使用する前に、既に汚染されていた場合の責任の所在
『弁法』は「汚染した者が、処理を行う」と規定していますが、企業が現在使用している土地が使用する前、既に汚染されていたケースで、政府機関が土地使用権を回収する際、どのように責任の主体を認定するのでしょうか。これまで中国では、経済や政策等の外部環境の影響を受け、全体としての環境保護意識が高くなかったこともあり、所管の環境保護機関も各々の段階の所管の土地の使用状況及び土壌環境の状況を正確に把握しておらず、企業自身としても有効な証拠を提示して自らに汚染責任がないことを証明することは難しいと思われます。このため所管の環境保護機関が土壤汚染の責任の主体を認定する際、現在土地を使用している企業が汚染責任の主体から外されることは難しいかと思われます。現在土地を使用している企業として、歴代の既に行われた環境保護プロジェクトの検収証明書、環境保護検査への合格証書、汚染物質の排出及び処理の記録等の関連する証拠を保管しておく必要があります。
2.中国において新たな企業設立を予定されている企業へのアドバイス
中国において新たな企業設立を予定されている場合、事前に環境アセスメント調査を充分に行い、土地の使用状況及び土壤環境の状況を調査し、既に汚染されている土地を使用されることを避けることを、お勧めいたします。規定によれば、汚染地が処理及び修復されていないか、処理並びに修復が基準を達成していない場合、企業は所管の環境保護機関から環境アセスメント報告書に対する認可を得ることができないとされています。関連する規定によれば、企業が環境保護機関から環境アセスメント報告書の認可を得られなければ、建設を開始してはならないとされています。
また、『弁法』は、主に非鉄金属精錬等の汚染が著しい業界用地の土壤汚染の防止と管理に適用され、その他の業界用地の土壤環境に対する監督管理の規定は、関連する所管機関が別途制定することになっています。各外資系企業の皆様に置かれましては、引き続き関連する動向にご注目いただくと同時に、企業における日常的な汚染防止に対する設備を建設され、汚染防止管理業務を強化されることを、お勧めいたします。

 

作成日:2017年02月20日