雇用安定手当の支給範囲の拡大が日系企業へ及ぼす影響
■雇用安定手当の支給範囲が拡大された背景
●中国経済は世界経済の下振れの影響を受け、経済の先行きが不透明になるなか、中国国内の多くの外資系企業も撤退、解散、リストラを敢行するという大きな流れの中で、昨年より中国政府は経営が困難な企業に対し、5種類の困難企業に対しての雇用安定手当の支給を開始しました。最近、経済の下振れ懸念が蔓延するなか、中国全土で次第に雇用安定手当の支給範囲が拡大しつつあります。12月4日に青島市の人力資源社会保障局、財政局も『魯人社発【2015】55号文書の雇用安定手当支給業務の徹底に関する通知』(以下「通知」という。)を公布し、雇用安定手当の支給範囲を拡大しました。
■「通知」のポイント
●雇用安定手当の支給範囲が、生産過剰企業、時代遅れな企業、資源節約・産業廃棄物減少企業、主な業務と補助的業務を分離している企業、合併再編した企業という5種類の企業(以下「困難企業」という。)から全ての次の条件に合致する会社に拡大されました。生産経営活動が産業調整と環境保護政策に合致し、法に基づいて失業保険を納付し、年間のリストラ率が青島市で登記されている失業率より低いこと。
●条件に合う企業は、毎年雇用安定手当を申請し、1回受け取ることができました。しかし、申請のチャンスは、毎年2回から1回に減り、毎年5月30日迄に失業保険に加入している地区の市級失業保険取扱機関に申請することになりました。「通知」の規定によれば、雇用安定手当の申請条件に合致し、なお且つ2015年度にリストラを行っていない企業は、2016年12月15日迄に関連書類を提出し、雇用安定手当を申請することができます。
●新たに支給範囲に入る企業が受けることのできる雇用安定手当の基準は、困難企業より低く、企業従業員が前年度実際に納付した失業保険料総額の30%の基準で申請し、受け取ることとなります。企業が申請した雇用安定手当は、主に従業員の生活補助、社会保険料の納付、異動に伴う研修、技能レベルアップ研修等の関連支出に用いられます。
■日系企業の皆様へのアドバイス
上記の規定及び時事分析を踏まえますと、次のような深層上の問題が懸念されます。
青島市を除いて、中国各地で何れも雇用安定手当の支給が拡大されています。
これは現段階において、中国国内の外資系企業か地場企業かに関わらず、いずれもある程度の経営上の困難が存在していることを示すものと思われます。リストラは、企業の生産コストを抑え、発展を図る一つの方法です。
企業のリストラが全社会的な現象となった後、従業員の再就職は更に難しくなります。こうした状況で企業がリストラを行い、雇用契約を解除することは更に難しくなり、労働紛争を引き起こし易くなり、さらには社会の不安定という現象を招くことになるでしょう。
中国政府は、雇用安定手当の支給範囲を拡大し、財政手当という形式を通じて企業の雇用率を維持し、リストラ率を抑えると共に、社会の安定も維持しようとしています。現在の情勢において、企業がリストラを行うか、従業員の雇用契約を解除する場合には、事前に所管の政府機関と話し合い、所管機関の意見を聞くことを、お勧めいたします。
作成日:2015年12月23日